第8話 猿と鬼
同僚たちが死んでいく地獄の中をひた走り、俺は居住区へとたどり着いた。
マンションのエレベーターはエマージェンシー・システムにより停止中。階段を使って六階まで駆け上がる。
肺が破裂しそうになりながらも自分の部屋に向かい、リーダーにIDカードをかざすも鍵が開かない。
「しまった、俺のカードはあいつが……ん?」
落ち着いてみてみると、リーダーのランプが緑色に光っている。
鍵が、開いている……?
一気に全身から汗が噴き出した。
ドクドクと心臓が嫌なリズムを刻む中、俺はドアノブに手をかけて扉を開く。
「これは……」
部屋の中は酷いありさまだった。
ソファはずたずたに引き裂かれ、テレビには花瓶が突き刺さっている。
ベランダの窓が開いており、柵の上に花梨を抱えた猿が座っていた。
「花梨!」
俺が急いで駆け寄ると、猿は一瞬こちらをむいてにやりと笑い地上へと飛び降りた。
「花梨ー! うう……ううぅ……」
全身から力が抜けてその場に座り込む。
ベランダの床には花梨がいつもつけていた花柄のヘアピンが落ちていた。
俺はそのヘアピンを握りしめる。
ふつふつと、怒りが込み上げてきた。
なぜ俺たちがこんな目にあわなければならない。
いや、俺たちだけならまだしも、なぜ花梨まで巻き込まれなければならないんだ。
因果応報、と言われればそうなのかもしれない。
ならば俺の大事なものを、俺の人生を奪った|猿ども《やつら》も同じだ。
俺の娘に手を出したことを……後悔させてやる。
俺はよろめきながら立ち上がり、黒煙が立ち上る島を睨みつけた。
猿島 超新星 小石 @koishi10987784
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