第2話

 魔法というものは『自分の中のイメージを現実に魔力を使って表す』というものなので、オリジナル魔法を創ることはできないでもない。


 が、人にはそれぞれ適正属性がある。

 例えば、俺のかつての仲間にレインという氷系魔術師がいた。

 彼女の髪の色は水色だ。

 

 水色の髪の人は氷系魔術が使える。


 他の基本属性の炎、水、風、土はそれぞれのイメージカラー(左から赤、青、緑、茶)なのに対し、髪の色が銀、金、白、黒の人間たちは、金髪なら『自分だけの”魔剣”を召喚できる』など、それぞれ強力な特徴がある。

 

 割合的には基本属性で8、その他で2くらいだ。

 だが、その他の2の中には、金髪がほとんどなので銀、黒、白は珍しいと言える。


 このように、髪の色によって強さが違うのがこの世界である。


 俺の場合、前世から黒髪だったので当たり前と言えば当たり前だが、リーミアも一応黒髪。


 黒髪の特徴の一つとして、『すべての魔法の適性がある』というもの。

 他には、黒髪の人間は一人ひとりが必ず『”固有スキル”を15歳になると発現する』というものがある。

 

 まあ、俺は前世があるので、自分のスキルが何なのか知っているが。


 そこで、重要なのは、俺とリーミアは黒髪。

 そして、黒髪の特徴には『すべての魔法の適性がある』というものがある。

 つまり、オリジナル魔法の属性が何であろうと、俺たちには関係ない。ということだ。

  

 だがやはり、オリジナル魔法を作ろうとするとすべてをイチからイメージをしないといけないので、かなりの時間がかかる。

 できたとしても、使うたびにその対価――つまり魔力がごっそり持っていかれてしまうのだ。


 これらの理由からオリジナル魔法の実現は難しいと言える。 


 



 だが、それらの理由全てを覆すような出来事が起きた。


 その出来事とは、リーミアの”固有スキル”が判明したときのことである。




――――――――――



 今日は快晴。

 気温も20度前後で、これ以上ないピクニック日和。

 今日も今日とて俺はマイエンジェル――リーミアちゃんと遊ぶ約束をしていた。


 15にもなってずっと一緒にいると、そろそろ周りの親父が騒ぎ始める頃だ。

 村では「おお、新婚さん。新鮮の野菜はどうだい?」と茶化してくる輩もいるが、そこでリーミアが「ふふーん。いい旦那さまでしょ?」と腕に抱きついてくるので、否定できずにいる。


 これでちょっと照れ隠しでもしてしまうと、


「……え?ミクロは私がお嫁さんだと嫌?………そ、そうよ、ね。グスッ。私なんか、といると…ズッ…づまらないもんね…ひっぐ、…ご、ごめんね。今まで。私が、かわいぐなぐで。ち゛ょっと死んでぐるね……」


 と、号泣してしまった前科があるので、もうリーミアを泣かせまい。ということでできないのである。


 まあ、こんな可愛い幼馴染がお嫁さんなんて、嫌なわけないけどね。

 むしろ大歓迎。

 僕はずっと君を守るよ♡

 なーんてね。


 すみませんキモかったですよね。ほんとごめんなさい。



 コホンッ。

 というわけで今日も遊びに行くのだが、今日は前にも述べたとおり、ピクニック日和なのでキッチンでピクニック用のお弁当の準備をしている。


 もしかしたら他の遊びになるかもしれないが、そうなったときはお弁当は自分ひとりで食べればいい。


「(コンコン)」


 さて、ここで我が天使のお迎えがくる。


「開けてどーぞ―」


「(ドーン!!)ミクロ!問題でーす!今日は何日和でしょーか!10秒以内でお答えください」


 玄関はキッチンの近くにあるので、その場で伝わるくらいの距離があるのに、わざわざ大声で話しかけてくる。

 

 これはよほど機嫌がいいようだ。


「では行きます!じゅー――」


「――ピクニック」


「――う、って早っ!しかも正解!!やっぱりミクロは頭がいいねぇ〜よちよち」


 そう言って玄関の近くまで来た俺の頭を撫で始めるリーミア。

 15にもなって何をやっているんだと思うが、それを言ってしまうと彼女が泣きかねない。

 

 何より俺にとって彼女は自分よりも大切な存在。

 彼女の綺麗な肌に傷がつこうもんなら俺は犯人を宇宙のその向こうまで飛ばすことだってできる。

 これでも俺は”空間魔法”の使い手として評判だった男だ。

 そんなことくらい余裕だね(ドヤ)。


 なによりリーミアが可愛すぎて何も断ることができない。


 そんな俺だからか。

 いつからか俺は半ば彼女の下僕しもべになってしまっているのだがそれはそれで別にいい。




 ……そんな事を考えていると彼女の手が何処かへ行ってしまう。


 ああ、行かないで――


「ミクロの言ったとおり、今日はピクニック日和!だから今日の遊びはピクニックに決定!さあ、行くぞ!」


「――(ハッ)ああ、だと思ったからお昼のお弁当を作っておいた」


 俺はリーミアの前へお弁当を突き出す。


「おお〜さすが私の旦那様だ!よーし!それを持って早く行くぞ。おー!」


 そう言い残して、リーミアは外へ出てってしまう


「あ、待って」


 まだ靴を履いていなかった俺は、急いで靴を履き、外へと出ていった。



 箸を忘れて。

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転生したのでスローライフをしたかったが、幼馴染が可愛すぎて(断れなくて)無理そうです @aicekuriimu

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