美しい構図によって幕を開ける世界の真実を辿る旅路

丁寧な筆致と優しい人たちが織りなす0~1章は鏡合わせのような構造の中でメインとなる物語が進行し、最後に二人の出会いの場面へ終息するという美しい構図です。
新しい世界を構築した時には、何をどれくらい描写すべきなのかが一番難しい問題かと思いますが、作者は程よいバランスで世界に光を当てます。何らかの真実を孕んだ世界の中で、二人の主人公がそれぞれの思いを抱きながら出会ったのは、確かに運命的なものを感じます。

「優しい人たち」と形容したのは、登場するキャラクターたちがいずれも気持ちのいい人間だからです。これを描くことができるのは作者の人間性によるのかもしれないと感じてしまうほどです。
それゆえに、この作者の描く「悪」がどういうものなのか想像力を掻き立てられますし、それがおそらくはこの物語の根幹となっているのだろうと感じます。

美しい構図を持った1章はそれだけでも完成度が高いなと感じますが、それがまだ序章も序章であることが素敵です。その1章の中で主人公たちに迫る魔の手の存在も明らかになり、ますます先の展開が楽しみになりました。

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