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○ ● ○








「容体は?」

「昨日と変わりません」

 医師が病室に入ってくる。その問いに、少女の様子を見ていた看護師が答えた。

 少女の顔には、大きすぎるくらいの酸素マスクがつけられていた。そのまぶたは安らかに閉じられている。首元には、ベルトの痛々しい跡がくっきり残っていた。

「虐待と、いじめ……。どうして、こんな若い子が……」

 看護師の瞳が揺らぐ。少女の額にかかった前髪を、看護師はそっとよけた。穏やかな表情が、死を選んだ理由を物語っているようで、何とも物悲しい気持ちがその胸をよぎる。

 診察のために医師が少女のベッドに近づく。看護師は場所を譲った。

「あまり心を近づけすぎない方がいい。いずれあなたの心が死んでしまう」

 医師の放った言葉は、ともすればこの少女をも突き放すもので、看護師も思わず口を開きかけた。だが最終的には医師の言葉の方が、少しだけ正しさに近いと思ったのだろう。

「この子は、目覚めるでしょうか」

 諦めたように、沈んだ声を出した。

 医師は最初と変わらない、落ち着いた声で言う。

「それはこの子の生きたいという気持ち次第だろうね」

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名無しの権兵衛 燦々東里 @iriacvc64

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