読む者をも飲み込む圧倒的なエネルギー

文体と体裁を自在に操り、濃密な世界を構築しています。
作者が影響を受けたであろう既存の作品群のエッセンスを背景に展開される文章表現そのものが読む者すらも飲み込むようなエネルギーを持っているように感じました。
頭の中にあるものをいかに自分好みに味付けをして表現するのかを心得ている様子に身を委ねられるような安心感すらあります。

世界観をじっくりと語りながら、前の世界と今の世界の混在した人間関係をいわくありげに描いてみせることで、かなり重層的な物語が構築されているように感じられました。
そのスローペースの冒頭から戦いが勃発し、主人公の中に秘められた力が垣間見えるポイントまでの、「やりたいことを全部ぶち込んでいる感」がとても心地よく、私もこういう世界観が好きだなと浸っていました。きっと中二病を経験した全ての人がこの世界観を好きになるだろうと思います。

村が経験した10年の平穏の謎や主人公に纏わりつくもの、この世界の魔法体系や癖のあるキャラクターたち……それらがこの世界に読者を引きずり込んでくれます。
作者は中二病を自覚されているようですが、その突き詰め方は新しく誰かに影響を与えうるようなパワーになっていると思います。

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