読むだけで論理的思考力が最強になる短編

かぎろ

A・B・C・D・E

 突然ですが、みなさんは算数は得意でしょうか?

 得意な人もいれば、苦手な人もいますよね。計算が嫌いですか? 図形がダメですか? なかには、他はできるんだけど文章問題がちょっと……という人もいるかもしれませんね。

 文章問題は、論理的思考力を鍛えれば簡単に解けるようになります。

 今回は論理的思考力について高めていきましょう。




 さて、さっそく問題です。


 Aさん~Eさんの5人のうち4人は正直者で、1人が嘘つきです。嘘つきはだれでしょう?




A「Dは嘘をついています」


B「私は嘘をついていません」


C「Aは嘘をついていません」


D「Bは嘘をついています」


X「Eは俺が始末した」


A「馬鹿な」


X「嘘じゃあない。そこにあるのがEの亡骸だ」


E「」


B「うそ……そんな……」


C「おい……おいおいおい」


D「ぼ、僕は信じない! Xは噓つきだ!」


X「ふん……いちいち嘘だの本当だの。無駄なんだよ、そんな考え」


D「何だとぉ!」


X「だってそうだろう? 貴様らはどうせ死ぬ。俺のクロス・シザースに切り裂かれてな……!」


A「くっ……! 非道な……!」


E「……ぅ……」


B「っ! E! まだ息があるわ!」


C「おいマジか! E、しっかりしろ!」


E「み……みんな……」


A「喋るな、E。……出血量がひどい。……おまえはもう助からない」


D「何言ってんだよA! 助けなきゃ! 僕たち、仲間でしょ!?」


A「助けたいさ!! おれだって!!」


B「A……」


A「……いま、Xが脅威だ。おれたちはこれからXを倒し、魔王をも打ち破らなくてはならない。そのためにも……Eのためにも! 残されたおれたち4人で、Xを倒す!」


C「……!」


E「ま……ま、て……A……」


A「いくぞ! B、C、援護を頼む! おれとDで奴に攻撃を」


E「A……! オレを襲ったのは……! おまえの後ろにいる奴だ!」


A「!」

 「……?」

 「な、ん……? ガフッ……」

 「な……ぜ……」

 「だ……」

 「…………D……」


D「…………。」


A「――――――」


C「お……おい!? D、何やってる!?」


B「D!? どうして!? Aを……背後から。……私たちに……嘘を、ついていたの?」


D「……。」

 「僕はさぁ……」

 「思うんだよね。」

 「世の中、出し抜いたもん勝ちだ、ってさ……」


C「おいおい……おいふざけんなよ……!?」


X「仲良しごっこは終わりか、D?」


D「はい、Xさん。つまらない連中でした」


X「フン。しょせん心はまがいもの。他者を信頼するだけ無駄というわけだ。……さて、〝特記戦力〟のAとEは死んだ。残りは雑魚だ、捨て置くぞ。戻ろう。玉座で〝王〟がお待ちだ」


D「はい」


C「おい待てよDっ! 仲間だろ! 一緒に戦ってきただろうが! 裏切るの、かよ……!」


B「そうよ! Aに憧れて騎士団に入ったって言って……立派な騎士になりたいって目を輝かせた、あの意志は嘘だったの!?」


D「ああ。僕は嘘つきさ」


B「Dは……あなたは最低の……詐欺師ね……」


C「D……! 嘘まみれ野郎が……!」


X「滑稽だな。俺からすれば、A~Eだけでなく人間は全員嘘つきで、正直者など、ひとりもいない」


D「行きましょう、Xさん」


X「ああ」


B「ま……待って! 待ちなさい! あ……」


C「き、消えた……跡形もなく……」


B「う、うぅぅ……! A、E! お願い、目を覚まして!」


A「――――――」


E「――――――」


B「……ひぐ、ひっぐ……うぅぁぁ……」


C「っ! おい、泣くなB! 見ろ、Aにはまだ意識があるぞ!」


B「……! A!」


A「おまえ、たち……」


B「何でも言って、A! 私たち、あなたが助かるなら何でもするわ! 本当よ!」


A「はやく……Dを追え……」


C「わかってるぜ、A。だけど、まずはあんたとEが助かる道を……」


A「D、は……」

 「Dは嘘をついている」

 「大きな、嘘を……」


B「そ、そうよ……あの子は嘘つきの詐欺師だったのよ」


A「ちがう」


C「え?」


A「よく見ろ、Eを……」

 「Eはただの仮死状態だ。あの一瞬で、Dに仮死薬を投与されたんだ」

 「おれもそうだ。背後から刺されたと思った時、殺気を感じなかった。この血も、魔術で見せかけているだけだ」

 「Dにやられて、わかったんだよ。おれとEの状況が……」


B「それって……」


C「AもEも、助かるってことか!」


A「あいつはいま、心で泣いている。」


B「……!」


C「…………。」


A「Dを救ってやってくれ」

 「B。C。おまえたちならできる」

 「おれはふがいない隊長だが……」

 「信じることはできる。」

 「嘘でも、まがいものでもない、B~Eの心を信じている……」

 「…………――――――――――」


B「A……わ、私……」


C「……行くぜ、B。仮死薬なら、こっちの薬を飲ませて30分もすれば動けるくらいに復活するはずだ」


B「……そうね。追いましょう。魔力の痕跡を辿るわ。……D。あの子は……」


C「きっと大丈夫さ。これまでだってそうだった」


B「そうね。それに、一言がつんと言ってやらないと気が済まないわ」


C「おいおい、あんたのは一言どころじゃねーだろ?」


B「千言がつがつがつんと言ってやるわ!」


C「っしゃ! 待ってろよ、D! そしてXと、魔王は――――」


B+C「絶対に、倒すっっ!!」




 Aさん~Eさんの中で4人は正直者で、1人が嘘つきです。BさんとCさんは疾風魔術により毎分800mの速さで20km先の魔王城へと出発しました。その後、30分後にAさんとEさんは仮死状態から抜け出して毎分2000mの速さでBさんとCさんを追いかけました。魔王城の最上階・玉座の間にて魔王を罠に嵌めて殺害し、その邪悪なるチカラを取り込んだXさんに弄ばれて満身創痍のBさんとCさんのもとへAさんとEさんが追いつきふたりが激昂するその時、世界崩壊へのカウントダウンは残りいくつでしょう?

 なお、Dさんの嘘は赦されふたたび仲間として戦うものとし、

 Aさん・Bさん・Cさん・Dさん・Eさんの絆は決して砕けないものとし、

 邪神に堕ちたXさんのその心をも救済するものとします。

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