悩める少女を先へ導いたものは教師の懐だった

 進路希望に「無し」と書いて提出した水川結依(みずかわゆい)は、当然のごとく担任の風晴択己(かぜはるたくみ)——通称“かぜたく先生”に呼び出され、個人面談を強いられることとなった。言葉という刃を相打つ思春期少女vs教師! その顛末はいかに!?

 おもしろいのは、この作品における子どもvs大人というひとつの王道の描き方……テーマをドラマへ転じる「展開」です。

 結依さんは自分の意志を主張する中で次第に自分というものへ疑問を抱いていきます。先生は彼女の主張を発止と受け止めるかと思いきや、ふいにいなしたり逆に打ち込ませたりして導き、問うのです。それは自分が本当に納得した未来か?

 ただ上から押しつけるのでなく、ただ下から突き上げるのでもなく、互いの言葉を受けて、返して、無駄話という支流なんかも経ながら太い本流を形作っていく。これはもう、「会話」の妙と言うよりなしですね。

 けしてスカっとは終わらない、でも最高に爽やかな読後感をくれる会話劇。とにかく読んでください。そして浸ってください。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋 剛)

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