雑居ビルの一室に事務所を構える俳人探偵と歌人探偵。ある日俳人探偵のもとに、「誰も出していないはずの句が句会に現れる」と相談が持ちかけられてーー。
俳人、歌人のふたりの饒舌な会話を楽しんでいるだけで、句会や季語など、俳句、短歌に関する知識がすんなりと頭に入ってきます。
また、すでに句会をはじめ短詩形文学に親しんでいる読者も多いと思いますが、作中で展開される、デジタル時代の句会のありかたや、定型をどう考えるかなどのさまざまな問いは、探偵たちのトークに参加したくなるような、地に足のついた実践的なリアリティに満ちています。
プロが垣間見せてくれるこういう視点が楽しいんですよね!
まえがきには「まともなミステリは期待しないでください」と書いてありますが、きっちり推理小説の型を踏襲した展開に、鮮やかなキレのあるラスト。一読して唸りました。
会話の節々に感じられるふたりの人物造詣や関係性も、一筋縄でいかない魅力たっぷり。
昔話としてちらっと登場する過去の難事件もとても面白そう。特に、歌合(うたあわせ)に「デスゲーム」とルビの振られた難事件……ああ、続編が読みたい!!
歌人・小説家として活躍する著者による満足度の高い一作です。
(「謎解き+教養! 知的ミステリー」4選/文=ぽの)