第12話 自己満と開示
俺はその日、雪音さんへと連絡を送った。
内容としては周りに同じような境遇の人がいること、そして初めて接点をとったこと。自分はその人と仲良くなりたい、ということを伝えてみた。
『なるほどね~、やっぱり今のご時世探せばいるもんだね』
『僕も最初はびっくりしまいした、まさかと思っていたんですけど・・・』
『まあまあ、そこは人それぞれっていう部分もあることだからさ。それで、仲良くなりたいんだっけ?それはちなみにどうして?』
『同じ境遇なら理解しあえることもあると思うんです、自分と近しい人たちって、あまりいないじゃないですか。だからこそ何か力になりたいと思って』
自分自身も雪音さんと会うまでは、独りぼっちという感情が支配していて寂しかった。だからこそ、小山さんに協力できることはないかと考えた末のものであり俺自身のさみしさを埋めるものでもあった。
返信が続いていたのに返ってこなくなる、なにか気に障ることでも言ったであろうか。それともうまく伝わらなかったのであろうか、スマホを凝視し続けること数分。やっと彼女から返信が送られてきた、それは長文になって綴られていた。
『うーん、それは相手の為になっていないと思うよ。第一、向こうはどう反応を示してきたの?自由くんの主張が強くて、あまり相手のことを配慮されていないかも』
『それに彼女は誰かを望んでいるのかな?理解してくれなくていい、なんて考えができていたとしたら余計なお世話になってしまうよね』
『だれしもが皆、理解者を求めているとは限らない。一人で自由にそして好きに過ごすことを選択している人だっているんだ。介入しすぎる範疇じゃないよ』
矢継ぎ早にメッセージが送られてくる。その内容を途中から見ることができなくなっていた、自分がどれだけ人のことを考えていないのかを痛感したためだった。彼女が自分よりも一回り大人であることを痛感する、俺が抱いていた考えっていうのは酷く背伸びしたモノであったのが明らかになった
『それでも、、、』
『でも、もし君がそうじゃなくて仲良くなりたいっていうのであれば少し手伝ってあげるよ。それぐらいはできるからね』
『まずは・・・・・』
☆☆☆
「ねぇ、ここ最近いつも図書室に来るけど部活とかやっていないの?」
あれからというもの俺は時間を見つけては図書室に足を運ぶようになっていった。雪音さんからのアドバイスとしてはこうだった。
『お互いに何も知らないんだから話す機会を多くした方がいいね、単純接触効果って言うんだけど。まずは自分のことは開示しやすくした方がいい』
冷静に考えればそれしかないな、今の自分はそう思う。あの時は自分の考えに冷静さを失っていた。
いきなり『小山さんって男性の服が好きなんですか!?』なんて言ったらセクハラどころの話じゃすまない。きっと話は一斉に広まって俺は生徒指導部行きは確定だし、小山さんも少ない学生生活に黄色信号が灯る可能性だってあったわけだ。冷静な雪音さんに相談を持ち掛けて正解だったと思う。
「いや、この前に借りた歴史の本が面白くて偶には読書もいいかな~って。部活もやっていないしバイトだってもうちょっと遅い時間帯だからさ」
「そっかぁ、部活やっていないんだね。木下君ってスポーツとかそつなくこなしているイメージあったから。バイトは何をやっているの?」
そうやって会話をする二人。もちろん、図書室なのだから会話のレベルはごく低音ではあるし回数だって少なめだ。互いに世間話程度の会話をして、すぐに自分の世界に没入する。
(焦らなくていい・・・)
そうやって時間をかけて互いのことを話していったある日、俺は小山さんと一緒に帰ることになった。それは彼女からの提案、彼女は駅利用なので自転車を押して駅までという道のりであった。
「ごめんね、突然に。しかもわざわざ逆方向なのに」
「別にそれぐらいいいって、ほら早く帰ろう」
そうして、ゆっくりと自転車を押しながら先を進めていった。話す内容なんてのはあまり変わらない。受験の話に次の定期試験の話、最後になる学校行事に関しても話していった。
「あっという間に時間が過ぎていきそうだよね、三年生ってそんなもんなのかな」
「多分、気づいたら年をまたいでいるんじゃないか?だからこそ、一日を大切にしないと・・・小山さん?」
話している最中、彼女はふと足を止めた。駅まであと少しの距離だが彼女の足は止まったまま、体調でも悪いのだろうか。表情を見ると何故か決心をした表情であった。
「木下君って嫌いなものとかある?」
「え・・・?あっー、食べ物とかならあったりするけどさ。突然なに・・・?」
「私と初めて会ったときに持っていた本のことを覚えている?」
「・・・知ってるよ。どんな内容かも。そして、小山さんが言った言葉も」
確かあの時は『着たいものを着るべきだと思っている』なんてことを言っていたな。そして俺はその言葉にあることに感じ取った、直感的なものであったが、きっと間違っていないはず。
「・・・私さ、思い悩んでいることがあってさ。着たいものを着る、なんてよくテレビとかでは言っているけど実際はそうじゃない気がしてさ」
「別に女子だってズボンを履きたいんだよ、お洒落だし冬なんて寒しさ。それでも・・・」
分かる、俺だって今でもそう思う。世間はたいして気にしないなんて言うけど、少数派の自分たちには、いつまで経っても変わらない『違った人なんだな』という目を向けられている。
「別にいいんじゃないかな、好きなんものを着たって。もしそれが他人の為であるのならしょうがない部分もある、けれどそれが自分の為であるなら我慢しない方がいい」
「え、それってどうゆう・・・」
言え・・・言うんだ
「同じ境遇なんだよ、俺たちは」
青年のためのミニスカート Rod-ルーズ @BFTsinon
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