古代ローマ剣闘士・皇族・少女将軍。1つでもピンときた方はこちらへ。

舞台は古代ローマ風世界。剣は出てきますが、魔法はありません。
転生やチートや降って湧いたような幸運の連続もありません。

花形の剣闘士奴隷として活躍していた主人公や、彼が出会うことになるヒロイン・皇帝の従妹である少女将軍は、血と汗と泥に塗れながら波乱の人生を歩んでいきます。

皇族の血統は複雑で王権がらみの思惑に満ち、雁字搦めの人生を歩むことになったヒロインは、自らの意思と関係なく人々の欲望に翻弄される運命。
そんな環境にあって、彼女が年齢以上の諦念と老成を持つに至ったのは、至極当然のことかもしれません。
いち将軍として部下たちを率いる姿は、冷静かつ勇猛。
しかし、その素顔はごく普通の少女そのもので、求められる立場や振る舞いとのギャップに、時に苦しさを感じてしまいます。

ヒロインを取り巻く周囲の人々は、とても個性豊か。
部下たちを始め、元剣闘士奴隷の主人公も、ヒロインと同格の立場にある各軍の将軍たちも、外部勢力も、様々なバックグラウンドを持ち、自分の意志だけではどうにもならない役割や、思惑を秘めています。

誰が敵で、味方で、救世主となり得るのか。

最初から最後まで読み切れない、緻密な筋立ての群像劇です。
物語の終わりは思いがけず爽やかで、希望を感じさせるものだと、私は感じました。

読むほどに登場人物の魅力が増していき、彼らの行く末を見届けたくなるタイプの作品です。
皇族の血統がいろいろ出てくるあたりで難しく感じる場合、その辺りはとりあえず読み流しておいて、物語の流れを大きく感じてみることをお勧めします。

むくつけき男たちのじゃれ合いや軍記物がお好きな方にもお勧めです。