第34話 明日はどっちだ

 鈴子がミリールに戻ってから、約ひと月。


 これだけの面々が揃ったことなどあったのだろうか? というほど、錚々そうそうたる面々が並んでいたのである。


 大陸ザハドのミリール国からは、ハース夫妻と、トルボ元帥。農業国ガイアール国からは国王ミルデロと環境大臣。ユーリル国からは国王ランスとクルスの兄弟。サリール国からは国王夫妻。さらに、周辺の小国からも、国王と皇太子、皇女や国軍隊長などが一堂に会し、これからの話をすることになったのだ。


「あら~! ランスさん、クルスさんお元気だった? クルスさんたら、ちょっと見ない間に大分顔色がいいじゃないの~! あ、ミルデロさん、奥様どう? あら、順調なのねっ! それはよかったわねぇ。ああ、サリールの国王様? んまぁ、初めまして、私、安西鈴子ですぅ。予言者…? まぁ、そんなようなものですけど、基本的にはただのおばちゃんなんですのよ。あはは、いやだわぁ!」


 各国の国王相手に、ご近所の寄り合い的ノリを発揮する鈴子。


 とはいえ、国同士だっていわゆる『お隣さん』であることに変わりはない。お高く留まって腹を探り合うより、この方が簡単でいいわ、と鈴子は思っていた。


「じゃ、そろそろ始めましょうか」

 一通りの挨拶を終え、皆に声を掛ける。


 これから先の、対、亜種への対応や対策などを考えるための会合である。

 もちろん、各国それぞれの意見や考えがある。その中でなにをどう進めていくのか、誰がそれをやるのかなど、考えなければいけないことは山積みなのだ。これを大陸ザハドの総意として一つずつ決めていく。大変な作業だろうと思われた。


「皆様ご承知の通り、この世界には大きく分けて人間と、それ以外の種が住んでます」

 鈴子が皆の顔を見ながら、語る。


「中には人間に危害を加えるものもいるかもしれません。しかし、彼らから見てもそれは同じ。自分たちの種と、それ以外。そして人間もまた、そんな彼らに危害を加えているかもしれないわけです」

 全員が神妙な面持ちで聞いている。


「いかに、お互いを尊重し、共存していくのか。干渉すべきところと触れずにいるべきところ。協力し合えるところもあれば、援助が必要なこともあるかもしれない。それをどうやって解決していくのか、ここにいるみんなで考えましょ」


 にっこり、笑う。


 国家間での壮大な会議のはずなのだが、親戚同志の集まりのように見える。集まった者たちは真剣に、そして前向きで建設的に話を進めていく。そんな様子を見ながら、なんだかとても嬉しく、温かい気持ちになる鈴子なのだった。




第一部 完    そしておばちゃんの世界救済はまだ続く……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ババア召喚 ~おばちゃんと考える世界の在り方~ にわ冬莉 @niwa-touri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ