最終話
ルール確認が終わった所で始まったファイナルゲーム。まずは、お互いに一点ずつ取り、スコアは1-1。
迎えた私のサーブで、ちょっとした奇跡が起きる。なんと相手の後衛が反応出来ずに、サービスエースを取る事が出来たのだ。
次のサーブは、相手の前衛が拾ってしまったが、それでも体勢を崩し、隙が生まれる。その隙を逃さず、瑠璃乃が点を決め、スコアは3-1。
サーブの順番がまわり、相手の前衛がサーブを打つが、私はリターンを良いコースに決めて、ポイントを取る。
次は、瑠璃乃のリターンだが、相手のサーブがネットギリギリに来てしまい、取る事が出来ず、一点取られてしまう。
スコアが4-2のまま迎えた瑠璃乃のサーブ。
相手の後衛が対応してきて、ラリー対決に持ち込んだ。
しかし、ファイナルゲームでのラリーとなると、流石に体力が持たない。何とかボールに追いついて返すも、ボールがネットに引っかかり、点を落としてしまう。
その後の、瑠璃乃のサーブは、無事に決まり、点数が5-3になった。
相手がサーブの準備をしている時、私が瑠璃乃に相談を持ちかけた。
「申し訳無いんだけど、かなり体力がキツくなって来たから、対策をしたい。何か良い方法はあるかな?」
「流石に、ファイナルまでは予想していなかったし、仕方ないよね。でも、一つだけ作戦を思いついたよ。ぶっつけ本番だけど、成功すれば、相手の後衛が動けなくなるくらい疲れさす事も出来ると思う。」
「何をすれば良いのか教えて」と聞くと、瑠璃乃は耳打ちをした。
作戦会議も終わり、相手の後衛がサーブを打ってくる。それを私は、相手の後衛の逆サイドに、ロブ気味に返した。相手もどうにか追いついて、返した事で、後衛vs後衛のラリーが始まるかに思われた。
しかし、その予想は少し外れていて、何とそのボールを瑠璃乃が返したのだ。相手は驚いている様子だったが、私達二人を相手にラリーを続けていく。
ただ、相手は一人に対して、こちらは二人。そのため、徐々に相手が疲れていき、結果的に一点取る事ができた。
これで、スコアは6-3になったので、後一点取れば私達の勝ちだと思っていた時、相手が
作戦会議している様子が見えた。
〜相手チームの作戦会議〜
「まさか、ここに来てダブ後を使ってくるなんてね。そのせいで、もう体力がほとんどないよ。」
「先輩にばかりボールが集中してしまって、ごめんなさい。でも、前衛が後ろに下がるダブ後って弱点が無いんですかね。だったら、もっと早くやればいいのに。」
「弱点はあるさ、私は二つ知っているよ。」
「本当ですか?なら、私も協力します。」
「まぁ、あんまり前衛は関係ない事だから、隙を見てボレーを決めて欲しいね。」
「了解です。」
双方の作戦会議が終わり、相手がサーブの準備をしている時、瑠璃乃にある事を言われた。
「...って事でよろしく。」
「分かった、絶対取るよ」と返した後、相手がすぐにサーブを打って来た。それを瑠璃乃が、
しっかり返して、またラリーに突入した。
しかし、そのラリーは長くは続かなかった。相手の後衛が、私達のコートの真ん中目掛けてボールを打って来たのだ。今は、ダブ後の状態なので、私達はセンターマークを起点に半分ずつを守備範囲としている。その最中、相手がどちらが取れば良いか分からないような、絶妙なボールを打って来た。
普通ならこのボールは取れず、一点落とす所だが、私は追いつき、ちゃんとしたフォームでボールを打ち返した。しかも、そのボールはサイドライン沿いギリギリだったため、相手が反応出来ずに、そのまま得点となり、私達は勝利した。
試合が終わり、高木先生の元に集められた時に、私達は一つの質問をされた。
「何故、最後のあのボールに追いつけたんだ。相手の思考を読んだとでも言うのか?」
その問いに対して、瑠璃乃が言葉を返す。
「最後のポイントの前に、毬花に伝言をしたんです。"どちらが取ればいいか分からないような絶妙なボールが来たら、取ってほしい"と。」
「瑠璃乃の伝言を聞いていたから、私は最後のボールに対応出来ました。」と先生に伝えると、
「そうか、瑠璃乃がダブ後の弱点を把握していて、毬花がそれに対応したのか。二人とも、良く頑張ったな。」
その後、先生の話が終わり、二人きりになった時、私達はハイタッチをして、勝利を喜んだ。
「毬花、勝ててよかったよー。本当に頑張ってたもん。」
「でも、瑠璃乃が居なかったら、絶対に無理だった。だから瑠璃乃、ソフトテニス部に誘ってくれて、私とペアを組んでくれてありがとう。」
普段なら言えない、照れくさい言葉だけど、
今なら伝わるはずだ。
「うん、私も毬花がペアで良かった。これからもずっと頑張ろうね。」
「約束だからね。」
これは、ソフトテニス初心者の私が、勝利を掴み取った話。そして、大切な親友に出会えた話。
ビクトリー! 一ノ瀬 夜月 @itinose-yozuki
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