第7話
心ここにあらずといった状態の時、「チェンジサービス」と掛け声が聞こえて、我に返り、瑠璃乃に謝罪をする。
「ごめん、打ったサーブが全部返されちゃって。自分的には、打つコースをこだわったつもりだったんだけど。」
「いやいや、コース自体は悪くなかったよ。でも、威力があまりないのと、ふんわりとした軌道だから、相手からしたら来るコースが丸分かりなんだよね。」
瑠璃乃から思い掛けない指摘が飛んできて、自分のサーブが甘かった事を思い知らされる。
でも、試合途中で大幅に打ち方を変えたら、今度は成功率が落ちてしまう。
思い悩んだ顔をしていると、瑠璃乃が言葉を投げかけて来た。
「次、サーブを打つ番になったら、一ゲーム無駄にしても良いから、打ちやすいフォームを見つけてみて。そんな大幅に変えるというよりは、サーブが直線的な軌道になるようにして欲しい。」
真っ直ぐ私の目を見つめながら、瑠璃乃が訴えて来た。今からサーブを変えるのは、不安があるけれど、瑠璃乃からのアドバイスは無駄にしたくない。そう思い、自分のサーブを変える決心をした。
「まぁ、まずは第三ゲームだよ。頑張ってカットサーブを攻略してね。」
「うん、最低限返せるようにする。」と宣言したのち、試合が再開する。
第三ゲーム開始直後の相手のカットサーブを何とか拾い、相手のコートにボールを返す。
しかし、前衛の子の近くに返してしまったため、綺麗に拾われて、相手の点になってしまう。
続く次のサーブは、瑠璃乃が前衛の真横を鋭いリターンで打ち抜き、ポイントをゲット。そのまま、流れに乗って、第三ゲームを取った。
第四ゲームは宣言通り、様々なサーブを試すが、中々決まらず相手に取られてしまう。
ゲームカウント2-2の同点で決めた第五ゲーム。私は、カットサーブに慣れて来て、狙った場所にリターン出来る位に成長していた。瑠璃乃も特に目立ったミスはないどころか、ボレーが絶好調だったため、無事に一ゲーム取る事が出来た。
今現在、私達の最大の難所、サーブを打たなければならない第六ゲームがやってきた。
第四ゲームで、いくつかの打ち方を試したが、持ち方とサーブのトス(ボールを空中に放る動作)を直す事にした。
実は、相手の前衛のサーブを見ていて気づいたことがあったのだ。相手は、サーブを打つときに体を半身にして、トスを高めに上げていた。そのおかげか、サーブの軌道がストレートで、速度が私より出ている。自分より上手い相手を利用しない手はない。
しかし、やる事が頭の中で決まった所で、一瞬でそれが出来るかというとそうではない。
コースの微調整に苦戦して、結局一本だけしか入らず、相手にゲームを取られてしまう。
ゲームカウント3-3になり、ファイルゲームへと移る。瑠璃乃に聞いた所、ファイルゲームは先に七点取れば勝ちで、6-6だとデュースが適応されるらしい。
肝心のサーブは、二点ごとに相手とこちらで交代するらしい。(二点ごとにチェンジサイズとチェンジサービスを繰り返す。)つまり、相手の後衛→私→相手の前衛→瑠璃乃と言った感じだ。つまり、私は絶対に二回、サーブを打たなければならないのだ。
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