第22話 フィーナーレ
「プロデューサー! どうしましょう」
「あれを歌いましょう。みんな、準備して!」
私は楽団の元に走り、曲名を告げた。
それは……ラインハルトがロイド☆βに渡した曲。
楽団からイントロが流れると、クリスはハッとして顔を上げ、他のメンバーを促して舞台に向かった。
「みなさん、聞いて下さい。新曲です『輝くキズナ』」
「わぁあああ!」
ひとりでは生きていけない 小さな光……
歌が始まったその時だった。すっとキャロルがクリスの横に立ち、歌い始めた。
「ひとりではー、生きていけない……小さな光」
「え……『でも、いくつもの光が集まれば、強い強い、光になるよ』」
一瞬戸惑ったクリスだったが、メロディに合わせて続きを歌い出した。
続いて、めろでぃたいむとロイド☆βのメンバーが一緒に声を合わせて歌う。
光は輝きになる 輝きが照らす 僕たちの未来
手を繋いで 笑い合って どこまでも行こうよ
小さな光だから 小さな光だから
私はいつの間にか涙を流していた。ああ、なんて尊い光景なんだろう。ライバルなのに、本当に楽しそうに歌っている。そしてどちらのファンも肩を組んで、曲に聞き入っている。
「ああーーーーやばい、つらい、尊すぎてしんどいーーっ!」
湧き上がるクソデカ感情のあまりに、私が思わず叫んだ瞬間、体が急に熱くなった。あれ? 私……どうしたの?
「リリアンナ! 君の全身が輝いているよ!」
「ええ?」
これってスキル? スキルの力で自分が光っているの? 違うの、私が輝かせたいのは、舞台の上のアイドル。そしてそれを応援するファンのペンラよ!
「いけーーーーっ!」
私が両手を掲げると、そこに光が集まった。そうよ、あのスキル授与の時みたいに飛ばせばいい。みんなのペンラに。
「言いたいことがあるんだよ! やっぱりみんなはかわいいよ! 好き好き大好き やっぱ好き! やっと見つけたお姫様! 私がが生まれてきた理由、それはみんなに出会うため! 私と一緒に人生歩もう、世界で一番愛してる!! ア・イ・シ・テ・ルーーーー!!」
私の放った光はペンラに宿った。そして放つのは神々しい七色の光。それは虹のウェーブとなって会場を埋め尽くした。
「……綺麗」
「そうだな。最高の舞台だ」
こうして、めろでぃたいむとロイド☆βの対バンライブは終了した。
***
お客さんが退場して、私は呆けたようになってロビーに佇んでいた。いったい、なんて日なのかしら。
「……リリアンナ」
「ロイド王子」
そんな私に声をかけてきたのはロイド王子だった。今度は何を言うつもりなのかしら。思わず身構えてしまう。
なんて言ったらいいのか。私の中でもう対抗心とかそういうものは、もう抜け落ちてしまっているの。だって素晴らしいライブを見たんですもの。
「ごめん!」
「――どうして謝るの?」
「お前たちの……事業を邪魔しようとしたから……」
「なにそれ」
本当に本当にばか。色んな人に迷惑掛けて。私がさらに叱ろうとした時、前に立ち塞がったのはラインハルトだった。
「どいて、ラインハルト! 邪魔よ」
「いや、ここは僕から一言言わせてくれ」
そうしてラインハルトはくるりと振り返ると、ロイド王子に向き合った。
「僕は音楽をこけにされたのが、一番頭にきてる。……でもそれより、あんたに言っておきたいことがある。あのさ……『好きな子をついいじめちゃう』なんてさ、めっちゃかっこ悪いよ。あんた……ダサいよロイド王子」
ラインハルトから、とんでもない切れ味の言葉が飛び出した。
「ぐ……すまない……」
「じゃあこれで。もう変なことしてこないでね」
ラインハルトの攻撃が意外にヘビーだったので、私はもうそれ以上言う気になれなくて、話を切り上げた。そして去ろうとした時、大声が聞こえた。
「リリアンナ!」
「なにかしら、王子」
「ロイド☆βを……君に……君たちに託してもいいか。彼らは私のところにいるより、きっと……」
よかった。言ってくれて。
「――うん、わかったわ!」
「ありがとう……」
こうして本当にロイド王子は姿を消した。
「よかったのか?」
「むしろこっちから頼みたい位だもん。いい人材よ。彼らは」
「忙しくなるな」
「そうね、曲も作らなきゃ、振り付けもしなきゃ。でも一からじゃない。私にはもう仲間がいるから」
私はラインハルトの前に向き直った。
「一緒にやるわよね!?」
「ああ。僕はリリアンナが好きだからね」
「私もラインハルトのことが大好きよ!」
私がそう答えると、彼は目を伏せて笑った。
「いいよ。今はそれで」
ん? どうした?
「プロデューサー! 撤収ですよ!」
「はいはーい、すぐ行きます! さ、ラインハルト行きましょう。明日からやること倍だからね!」
「望むところだ」
――私たちの挑戦はまだまだまーだ! 続く!!
END
公爵令嬢は推しごとしたい!~転生チート『メンカラ』で異世界ヲタ活プロデュース~ 高井うしお@新刊復讐の狼姫、後宮を駆ける @usiotakai
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