第2話
僕は市山遼、夜間科に通う高校4年生。
先日の文化祭である女の子と出逢った。
「葵ちゃんいい子だったな…。」
自室で彼女を思い出しながらつぶやく。
葵ちゃんは小柄でかわいらしい、守ってあげたくなる。
僕の心は惹かれつつある。
月曜日。
教室でクラスメイトと談笑していると…。
「遼先輩!」
僕を呼ぶ彼女の姿が見える。
まさか僕に会いに来てくれたのか?
笑顔で彼女の元へ近づく。
「葵ちゃんおはよう。」
「先輩…。」
彼女が上目づかいで見つめてくる、その瞳にきゅんとする。
もしかしたら一目惚れだったのかもしれない。
彼女をもっと見つめていたい。
「葵ちゃんはもう授業終わったの?」
彼女をじっと見つめながら会話する。
「うん、先輩に会いたくて来ちゃった。」
可愛いこというな。
僕も君に会いたかったよ、恥ずかしくて面と向かっては言えないけど…。
「そうか、ありがとう。」
彼女が可愛くて思わず頭をポンポンする。
「なっ?!」
顔を赤くして照れる彼女。
どうしてそんなに可愛いの?
僕の心鷲掴みにしてどうしようっていうの…。
「先輩、そんなことされたら勘違いしちゃうよ?」
「勘違いって?」
むしろ勘違いしてくれ、僕を見てくれ。
君が好きだ…こんなに夢中になった人は彼女以来だ。
「やっぱなんでもない。」
ごまかす彼女。
「そう、女の子に優しくしたらダメかい?」
嘘だ…君だから触れたいんだ。
「駄目じゃないです。」
照れながらいう君、困ってる君も愛しい。
「なら良かった、葵ちゃんとは仲良くしたいから。」
仲良くしたい、そして僕を好きになって欲しい。
出会ったばかりなのに僕はもう君中毒だ。
「私も仲良くしたいです。」
「じゃあ先輩じゃなくて遼って呼んで?」
君には名前で呼ばれたい。
ほかに親しい女の子はいないんだ、安心していいよ。
君は僕の特別だ…。
「…遼。」
「うん、葵ちゃん。」
僕の名を呼ぶ君が可愛すぎてぎゅっと抱き締める。
「なっ!遼?!」
僕の腕の中で顔を真っ赤にする君。
愛しくて離したくない。
「ん?」
わざとらしい声を出す。
「みんなが見てる。」
「あ~ごめん。」
視線なんか構わない、見せつけてやりたいくらいだ。
ホントは離したくないがそっと離す。
「遼…今好きな人とかっているの?」
勘違いしてくれたのかな?
君への想いは今はまだ伝えない。
「今はいないよ。」
「そうなんだ…。」
少し切なそうにする君。
ホントは今すぐにでも君が好きだと言いたい。
でもごめん、今はまだ内緒にさせてくれ…。
キンコンカンコーン
チャイムが鳴る。
「あ、もう授業始まるね…また明日。」
そう言って僕に手を振り去ってく君。
君が会いに来てくれたことが嬉しくてそのあとの授業は全然集中できなかった。
こんなのはあの彼女以来だ。
僕には昔すごく好きな人がいた…。
彼女とは付き合えなかった、それどころかもう二度と会えなくなってしまった。
空の上で元気にやってるだろうか…。
夜が明け火曜日。
「遼、また来ちゃった。」
今日も君がきてくれるなんて、嬉しい。
「おはよう、そういえば連絡先交換してなかったよね?」
君といつでも話したい。
「へっ?そうだね、教えてくれるの?」
「うん、いいよ。」
そうして連絡先を交換する。
「いつでもメールしてな。」
「うん。」
これでいつでも君と話せる、それだけでこんなにも幸せだなんて…。
「葵ちゃんってカラオケとか行く?」
「え?あまり行ったことない。」
「そうなんだ…じゃあ今週の土曜日行かない?」
緊張悟られないように君をデートに誘う。
デートに誘うなんて初めてだ。
「いいの?」
「いいよ、詳細はメールするよ。」
「うん、じゃあ今日はそろそろ帰るね。」
「ああ、気を付けてね。」
「うん。」
誘いを受けてくれてありがとう。
絶対楽しい一日にするからね、去っていく君の背中を見つめ心の中でつぶやく。
学校が終わり早速メールする。
『葵ちゃんメアドありがとう。土曜日13時に駅で大丈夫?』
返信待つ間落ち着かないな。
『うん大丈夫。楽しみにしてるね。』
彼女からの返信。
楽しみにしてくれてるなんて嬉しいな。
『僕も楽しみだよ。』
僕も楽しみだと返信する、楽しみすぎて寝れないかもしれない。
カラオケ以外どこ行こう、何が好きなのかな?
考え出すと止まらなくなる。
精一杯楽しませるプランを練る。
土曜日までの間毎日会いに来てくれる彼女。
毎日会えて気分は最高潮だ。
そして今日は約束の日。
待ち合わせより少し早く着いてしまった。
駅前の喧騒を眺めながら彼女を待つ。
「遼、待った?」
僕の元へ駆けてくる彼女。
白いワンピースが清廉な君によく似合う。
可愛いな…。
「いや今さっき来たとこだよ。そのワンピ似合ってるね、かわいい。」
「ありがとう。あれ、みんなは?」
「みんな?僕だけだよ。」
みんなは?と聞かれ少し驚く、まさか二人きりじゃない方がよかったのか?
「そうなんだ…。」
「僕と二人きりじゃ嫌かい?」
「全然嫌じゃないよ。」
良かった、僕はデートのつもりで誘ったから二人は嫌だと言われたらどうしようかと思った。
「じゃあ行こうか。」
「うん…。」
君の小さな手を取る。
僕が手を繋ぐと君は頬を赤らめる、その反応初心で可愛い。
君のぬくもりを感じながら手を引きカラオケへ向かう。
そういえばカラオケって密室だから君のを前にして冷静でいられるだろうか?
カラオケにつき部屋で二人きりになる。
「何歌おうか?」
僕はデンモク片手に悩む。
「これにしよう。」
そして君の好きそうなアニソンを入れる。
今日までの話でアニメ好きなのは知れたから喜んでくれるかな?
僕は君に心を込め歌う。
うまく歌えたかな?
君の反応を期待しながら振り向くと、頬を赤らめてる君がいた。
「はぁ~、葵ちゃん何歌う?」
君はどんな歌声なんだろう、そう思いながら聞く。
「うーんなににしようかな。でも音痴だから恥ずかしい。」
音痴なの気にしてるの可愛いな、そんなの気にしないのに。
「全然気にしないよ。」
「ほんと?」
「もちろん。」
ほっとした顔をする君。
愛しくてたまらないな…。
意を決し君が入れたのはラブソング。
僕の顔をチラ見しながら歌う、そんなに見つめられるとドキッとしちゃうよ。
歌詞が終わりメロディが流れる。
「遼、好き。」
マイクを持った君がつぶやく。
え?今なんて…好きって言った?
思考停止する、何か言わなくちゃ。
「ありがとう、ちょっと考えさして。」
「…うん。」
なんか気まずくなってしまう。
うつむく君、君には笑顔でいてほしい。
「ちゃんと考えるから、そんな顔しないで。」
頭を撫でながら言う。
「うん。気を取り直していっぱい歌おうっと!」
君はカラ元気に振る舞う。
「そうだね、楽しもうね。」
君を困らせたくなくてカラ元気な君に合わせる。
数時間後
「はあ~、いっぱい歌ったね。」
「うん、楽しかった。」
「じゃあ行こうか。」
また君の手を取る。
ずっと君に触れていたい。
君に好きと言ってもらえて嬉しい。
君の体温を感じながら歩く。
歩いてるとぎゅっと強く握る君。
それに応えるように僕もぎゅっと強く握る。
君に少しでも触れていたい…。
「じゃあ気を付けてね。」
「うん、ありがとう。」
駅につき君と別れる。
色々とあったけど初デートは無事終えれた。
告白されるなんて思ってなかったけど最高に楽しかったな…。
『今日は楽しかったね。気持ち伝えてくれてありがとう。
嬉しかったよ、返事はもう少し待ってね。』
君と別れた後メールを送る。
『私も初デート楽しかった。いきなりの告白ごめんね、どんな返事だとしても仲良くしてもらえるといいな…。』
気まずくなるのは僕も嫌だ。
僕も好きだけど…君を失うのが怖い。
彼女のように…いつかいなくなってしまうんじゃないかって。
なかなか返信ができないまま時間が過ぎる。
君に返信できないまま月曜日。
何気ないメールすら送れなかった。
昔のトラウマが今も僕を縛る…。
君のことはこんなにも好きになってしまったというのに。
それでも君に会いたくて向かう。
「葵ちゃん。」
教室の入り口から呼ぶ。
急いで僕の元へ近づく君。
「遼…。」
言わなきゃ…。
「今話せる?」
「うん。」
「ちょっと場所変えようか。」
君の手を引き歩き出す。
「ここならいいか…。」
君の手を引き校舎裏へ来た。
「話って何?」
ごめん、泣かせてしまう僕を許して…。
意気地なしな僕のことを好きになってくれてありがとう。
「こないだの返事なんだけど…。」
「うん…。」
「気持ちは嬉しかったんだけどごめん。」
ホントにごめんよ…。
「あ…そうですか。」
涙が君の頬を伝う。
「泣かないで、葵ちゃんいい子だから僕の他にもいい人いるよ。」
涙をそっとぬぐう。
泣かせてごめん。
君には幸せになってほしい、僕には無理なんだ…ごめん。
「ううっ…これからも仲良くしてくれる?」
「もちろん!僕たち友達だから。」
そんなの決まってる、君のそばにはいたい。
ホントは付き合いたいんだ…でも大好きだからこそ失うのが怖い。
初恋相手の彼女の時は、ただ見てるだけだった…でも君とは仲良くしたい。
そばで君を見ていたい。
「…良かった、私もう行くね。」
そう言うと足早に君は去っていく。
傷つけてごめん。
僕にできることならなんだってするから幸せになってくれ。
心の中で何度も何度も君に謝る僕。
ホント意気地なしだな…僕は。
どうしたらトラウマを乗り越えられるのだろうか…。
いつか君に好きって堂々と伝えられる日が来るのだろうか…来るといいな。
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