第5話

ザザーッ、ザザーン

満天の星空と静かな闇夜に響く波音。

「きれ~い!」

彼の手を離し波打ち際に駆けてく。

「フフッ喜んでくれたなら良かった、でも危ないよ。」

はしゃぐ私を見て笑う彼。

「…連れてきてくれてありがとう。」

「ほらこっちおいで。」

流木に腰かけた彼が呼ぶ。

「うん。」

彼の隣に腰を下ろす。


「寒くないか?」

上着をかけてくれる。

「ありがとう。」

きゅ~んっ

遼のにおいがする…幸せ~。

「葵ちゃん…大好きだよ。」

手を重ね見つめるあなた。

「遼…。」

波音が響く中唇が重なり合う。

なんてロマンチックなんだろう…。

「葵ちゃん…好きになってくれてありがとう。」

「……遼。」

涙があふれる。

彼がそっと頬に触れる。

「泣くのは僕の前だけにしてね。」

涙をぬぐってくれながら言う。

「うん、遼ずっとそばにいてくれる?」

「もちろん、ずっと君のそばにいるよ。君がもう嫌だと言ってもずっと…。」

そっと抱き寄せられる。

「ありがとう、ずっと遼と一緒にいられるなんてすごい幸せ。」

「僕もだよ。」

抱きしめあう私達、甘ったるい時間が流れる。


「そろそろ行こうか。」

立ち上がり手を差し出す彼。

「うん。」

差し出された手を取り立ち上がり手を繋ぎ海を後にする、



電車に揺られ彼の最寄り駅へ向かう。

「ホントにお泊り大丈夫?」

「うん、迷惑じゃない?今日は帰りたくない。」

「全然迷惑じゃないよ、僕も今夜は君といたい。」

顔が熱くなる…。

駅が近付くにつれて鼓動が早くなる…男の人の家に泊まるの初めて。

大丈夫かな?

彼を見つめながら色々思ってると駅につく。

「着いたね、降りよう。」

「うん。」

電車を降りて彼の家へ向かう。


「大丈夫かい?」

私を気遣う彼。

「大丈夫だよ、それよりドキドキのがやばい…。」

「そっか、僕もドキドキしてるよ…。」

繋いだ手が熱く感じる…。

付き合った初日にお泊りなんて早いのかな?

初めてのこと尽くしだからわからない。

それでも少しでも長く一緒にいたかったんだもん。

重くならないように気をつけなくちゃ…嫌われたくない。

もう好きを通り越して愛してる…彼も同じに思ってくれてるといいな。




「着いたよ、入って。」

心の中で色々思っていると着いたみたい。

「おじゃまします。」

夜だから小声で挨拶してあがる。

「僕の部屋は二階なんだ、行こ。」

「うん。」

彼について二階へ上がる…どうやら実家みたいだ、いいのかな?いきなり泊まっても…。


「お茶でも持ってくるから適当に座ってて。」

彼が一階へ降りていく。

待つ間部屋を見渡す、綺麗に整えられてて彼らしい部屋。

部屋中に彼のにおいが充満してる…落ち着くな。

もっと匂いが嗅ぎたくてベッドに頬ずりする。

「な~にしてるのかな?」

いじわるそうな顔で聞いてくる。

「あっ、えっとこれはその…。」

「ん?なんで頬ずりしてたのかな?」

こちらへ近づきながら聞く。

「うう~っ、遼のにおい嗅いでたの…ごめんなさい。」

シュンとする私、引かれたかな?

遼のにおいが好きでつい…。

「大丈夫だよ、ちょっと意地悪したくなっただけ…ごめんね。」

私を見つめながら頭を撫でる。

「遼のにおい落ち着くし頭撫でられるの好き。」

「葵ちゃん…おいで。」

手を取りベッドへ誘導する彼。

ギシッ

彼と共にベッドにあがるとそっと押し倒される。

「愛してるよ…。」

私を見下ろしながら囁く。

そっと近づく唇…。


触れた唇を離すとゴロンと横になる彼、彼の方を向き見つめる。

重なる視線…。

「今日はもう遅い…寝ようか?」

彼に言われ、ふと時計を見るともう23時。

「うん、おやすみ。」

「おやすみ。」

手を握ってくるあなた…手を繋ぎ眠りにつく。

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