第4話

彼女を振ってから一週間が経った。

あれから彼女が僕に会いに来ることはなかった…。

やっぱ気まずいよね、傷つけた僕が悪いけど君に会えないと寂しい。


『最近会いに来てくれないけど僕のせいだよね、ごめん。君を傷つけた僕が言えたことじゃないけど君に会いたい。待ってる。』

震える手で打ち君に送る。

振っておいて何を言うと思われるかもしれない、それでも君と会えないのは嫌だ、一目でいいから君に会いたい。


メールを送って数分後

「…遼。」

震える声で僕を呼ぶ君の声。


「葵ちゃん、来てくれたんだね。ありがとう。」

会いに来てくれたんだ、嬉しい。

君は僕の顔を見てくれないけど、僕は君を見つめるよ、会いたかった君の顔を…。

「遼…会いに来れなくてごめんね。」

そんな謝らないで、僕が悪いんだ…意気地なしなばかりに君を傷つけた僕が。

「全然いいよ、僕こそごめんね。難しいだろうけどこれからは友達として接しよ?」

目を合わせられない君の頭を撫でながら僕は言う。

君が泣きそうな顔で僕を見る。

「ありがとう、これからも仲良くしようね。」

「ああ、葵ちゃんはもう僕の大事な友達だよ。」

ホントは友達以上に想ってる、好きだよ…。

いつかトラウマを乗り越え君に好きと言えるだろうか?

それまでは君に会えるだけで幸せだよ。


それからチャイムが鳴るまでの間ぎこちないながらも色々話した。

「じゃあもう帰るね。」

「会いに来てくれてありがとう、また会いたいな。明日も待ってる。」

立ち去ろうとする君に言う。

会いたいのは本心だ…好きとは言えないのに会いたがるずるい僕を許して。

君の屈託のない笑顔に僕は惹かれたんだ…そばで見たい。



あくる日も君は会いに来てくれた。

段々気まずさもなくなってゆき、季節は春。

今日は卒業式だ…僕がこの学び舎を飛び去る日。

これから毎日君に会えなくなると思うと物悲しくなる。

会えなくてもメールがある…いつでも連絡は取れるんだということはわかってるけど寂しいものは寂しい。

寂しさに暮れていると

「遼!」

君が手を振りながら駆けよってくる。

あー君が好きだ…伝えたいこの気持ち。

「葵ちゃん。」

「卒業おめでとう。」

そう言って花束をくれる。

「ありがとう。」

いつものように君の頭を優しくなでる。

これからは寂しくなるな…君ににこうして毎日触れられないのは。

「寂しくなるな…葵ちゃんに毎日会えなくなるのは。」

君を見てるとつい本音がこぼれる。


「うん、私も寂しい。」

涙ぐみながら僕を見つめる君。

ぎゅっ

君の涙ぐむ姿が切なくて力強く抱きしめる…温かい。

「卒業しても君に会いに来てもいいかな?」

君を抱きしめながら言う。

「もちろん!会いに来てほしい。」

僕を見上げ答える君の唇にそっと重ねる。

会いに来てほしいなんて可愛すぎるよ…。

僕のファーストキスを君にあげる。

「ごめん、葵ちゃんが可愛くてつい。」

みるみる赤くなる君の顔。

「……り。」

「え?」

「もう無理っ…抑えられないよ、好き…大好き。」

涙を流しながら君が訴える。

好きと言われ僕は今度こそ覚悟を決める、乗り越えたわけじゃないけど今伝えたい。


二人の間に少しの沈黙が流れる。

「…僕も君が好きだ。」

未だ君を抱きしめながら伝える。

伝えられた…。

「…とりあえず離して。」

君が僕から逃げようとする、離したくない!

「嫌だ!離したくない。」

一層強く抱きしめる。

「嘘じゃない?ホントに?」

見つめながら君が聞く。

「ああ嘘じゃないよ、今更って思うかもだけど君が好きだ。」

嘘じゃない…今更になってごめん。

「ううっ…嬉しい、全然今更じゃないよ。」

再び唇が重ねる…さっきより長く。

甘い空気が流れる。


「遼…。」

僕の背中をぎゅっと掴みながら僕の名を呼ぶ君。

愛しすぎる…。

みんなが見てるけど今はそんなのどうだっていい。

もっと触れていたい。

また君の頬を涙が伝う。

「葵ちゃん、大事にするからね。」

熱いまなざしで君を見つめる。

「うん、よろしくね。」

僕からそっと離れ、上目づかいで言う君…可愛すぎる。

でもまだ君を抱きしめていたかった。

でも気づけば人まばらになってた…。

「葵ちゃん、行こうか?」

君の手を取る。

今までのと違う恋人つなぎで…。


「葵ちゃん、良かったらこのままどこか行かない?」

校門を出たはいいけどまだ君といたい僕はデートに誘う。

「えっいいの?」

「ああ、どこ行きたい?」

「う~ん、お任せしてもいい?」

お任せか…君にかっこいいとこ見せたいな。

「わかった、おなかすいてない?」

「おなかペコペコ。」

おなかに手を当て笑う君。

「じゃあご飯食べに行こっか。」

「うん。」

君と手を繋ぎレストランに向かう。

君を連れて向かったのはおしゃれなレストラン…喜んでくれるかな?

「入ろうか、おいで。」

「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ。」

ウェイターさんが笑顔で言う。

窓側の席に君をエスコートし、君に椅子を引く。

「ありがとう。」

君と向かい合い座る。

「何にしようかな?」

悩む君、そんな表情も好きだ。

「決まった?」

「うん、Aセットにする。遼は?」

「僕はBセットにしようかな。」

「すみませーん。」

ウエイターを呼ぶ。


「はいっお決まりでしょうか?」

「AセットとBセットを。」

「セットのお飲み物はどうされます?」

「僕はアイスコーヒーを、葵ちゃんは?」

「私はアイスティーを。」

「かしこまりました、少々お待ちください。」

ウエイターさんが離れる。


そわそわする君、緊張してるのかな?

でも色んな表情が見られて嬉しい。

「葵ちゃん緊張してる?」

「えっ、なんでわかったの?」

「そりゃ好きだから見てたらわかるよ。」

好きな子はいつまでも見てたい…。

ホント可愛すぎるよ、ほかの男に奪われそうで怖い。

君を独占したい。

「そ、そうなの?恥ずかしい…。」

頬を染めながら顔を覆い隠す君。

「だめっ隠さないで。」

隠さないで、リンゴみたいに真っ赤になる君も好きなんだ…見つめたい。

覆う手を掴む。

「なんで?」

「恥ずかしがる葵ちゃんも可愛いから見てたい。」

どんな君も見逃したくない。

そっと覆ってた手を下す君。

「遼、誰にでもこんなことしちゃだめだよ?」

「しないよ、僕が触れたいのは葵ちゃんだけだよ。」

当たり前だ、君だからこんなにも触れたくなるんだよ。

もういっそ鳥かごに閉じ込めたいぐらいだ…ほかのやつに君を見せたくない。

でもこんなこと言ったら重いって引かれるだろうな。

それぐらい君が愛しい。

「……うん。」

何とも言えない空気が二人を包む。


「お待たせしました、AセットとBセットになります。」

コトッ

ウエイターさんが料理を置く。

「ご注文の品はお揃いでしょうか?」

「はい。」

「それではごゆっくり。」

去ってくウエイター。


「…食べようか。」

「うん、いただきます。」

来た料理を食べ始める二人。

「んっ!おいしい~っ。」

おいしそうに食べる君。

ご飯デートは初めてだけど幸せそうに食べる君も可愛い。

「よかった、僕のも一口食べる?はいっあ~ん。」

君に差し出す。

あ~んとか恋人らしくていいな、初めてだから手が震える。

「あ~んっ」

照れながらパクっとする君。

「おいしい?」

「…うん、おいしい。」

「フッ顔真っ赤、可愛い。」

君があまりにも可愛すぎて笑ってしまう。

「なっ?1だってあ~んとかするから…。」

頬を膨らませる。

「ふくれっ面も可愛いよ?」

「っもう!遼だぁ~い好き。」

わざとらしい甘い声で君が言う。

お返しをくらった、可愛すぎだろ…今すぐ抱きしめたい。。

「なっ?!わかったよ、からかってごめん。」

からかっても君は怒らないでいてくれるんだね、ホントにいい子だね。

「それより食べよ?」

「ああそうだな。」

黙々と食べる僕たち。



「ふぅ~っ、食べたな。」

「うん、おなかいっぱい。」

デザートも食べ終わり談笑する。

フッ幸せな時間はいつまでも続いてほしい…君を見つめながら思う。

「じゃあ行こっか。」

「うん。」

席を立ち会計に向かう。

「お会計3600円になります。」

君はお財布を出そうとする。

「あ、おごらせて。」

ここはカッコつけたい、そのためにいいレストランに来たんだ…君の手を止める。「えっ、いいの?」

「うん、付き合った記念におごりたいんだ。」

今日だけじゃなくいつもカッコつけたいからこれからもおごらせて。

好きな子には常にいいとこ見せたい。

「…じゃあお言葉に甘えて、ごちそうさまです。」

ペコっと頭を下げる君。

「うん。」

「3600円ちょうど預かります、レシートになります。またのご来店お待ちしてます。」

会計を済ませ店を出る。

「今日ってまだ時間大丈夫?」

まだ一緒にいたいな…ダメかな?

時刻は8時過ぎ…。

「うんっまだ大丈夫だよ、親には今日もしかしたら帰らないかもってさっき連絡したから…。」

それってお泊りしたいってこと?

もう反則だよ、気持ちは一緒だったとか嬉しすぎる。

「そうなの?」

「うん…帰りたくない。」

僕を見つめながら手に力を込める君。

「僕も今夜は一緒にいたい。」

ひと時でも長くいたい、愛しすぎて理性が心配だけど。

「じゃあ僕の家来る?」

「えっ?」

「ごめん、いきなりはダメだったかな?」

思わず家に誘ってしまったけど引かれたかな?

「ううん、ダメじゃない!いいの?」

「もちろんいいよ。」

大歓迎に決まってる、君の寝顔を想像するとにやけそうになる。

でも今すぐはまだ早いよな…夜景でも見に行って雰囲気をよくしないと…って、何かするわけじゃないのに雰囲気ってなんだよ。

でも君に楽しんでもらいたい、夜景はデートの定番らしいし…いいよな?

「じゃあ夜景でも見に行かない?家はそのあとで…。」

「…うん。」

「行こう?」

君と手を繋ぎ歩き出す、ぬくもりを感じながら…。

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