第3話

彼に振られ泣き果てた私。

今日は返事をもらった翌週の月曜日。

あれから彼に会いに行けなかった…。

どんな顔して合えばいいのかわからない。

そんな時に彼からメールが届いたのだ。

『最近会いに来てくれないけど僕のせいだよね、ごめん。君を傷つけた僕が言えたことじゃないけど君に会いたい。待ってる。』

彼にそんなこと言われたら会いに行かずにはいられない…。

振られたってこの気持ちは簡単に消せやしない。

いくらでも彼に好きって伝えるんだ!

意を決し彼の元へ向かう。



「…遼。」

震える声で彼を呼ぶ。

彼が気づいてこっちに来る。

会いに来たはいいけどどうしよう。

心は複雑だ…それでも彼を見ると胸がときめく。

「葵ちゃん、来てくれたんだね。ありがとう。」

彼の顔が見れない…。

「遼…会いに来れなくてごめんね。」

気まずすぎるよ…どう接したらいいの?

彼の顔を見るとまだ泣きそうになる。

「全然いいよ、僕こそごめんね。難しいだろうけどこれからは友達として接しよ?」

目を合わせられない私の頭を撫でながら彼が言う。

彼に気を遣わせちゃってる…ごめんなさい。

彼を困らせたくなくて泣きそうになりながら彼を見る。

「ありがとう、これからも仲良くしようね。」

「ああ、葵ちゃんはもう僕の大事な友達だよ。」

彼に大事だと言われ弾む心。

彼といつか友達以上になれる時は来るのかな?



それからチャイムが鳴るまでの間ぎこちなく話した。

「じゃあもう帰るね。」

「会いに来てくれてありがとう、また会いたいな。明日も待ってる。」

立ち去ろうとする私に彼は言う。

そんなこと言われたらまた期待しちゃうよ…。

それでもあなたが好き、縁切れちゃうぐらいならあなたのそばにいる…たとえどんなに苦しくても。











あくる日も彼に会いに行く。

段々気まずさもなくなってゆき、季節は春。

今日は卒業式だ…彼が学び舎を飛び去ってく日。

これから毎日会えなくなっちゃうのかと思うと物悲しくなる。

会えなくてもメールがある…いつでも連絡は取れるんだと自分に言い聞かせ、花束を携え彼の元へ向かう。


「遼!」

彼を見つけ手を振る。

「葵ちゃん。」

「卒業おめでとう。」

そう言って花束を渡す。

「ありがとう。」

頭を撫でてくれるあなた。

これからは寂しくなるな…あなたにこうして触れてもらえなくなるね、毎日は。

「寂しくなるな…葵ちゃんに毎日会えなくなるのは。」

私の心を見透かすかのように彼が言う。

あなたも寂しいと思ってくれるの?

嬉しい…もし嘘だとしても。

彼を見つめる瞳に涙がたまる…。

「うん、私も寂しい。」

涙ぐみながらあなたを見つめる。

ぎゅっ

力強く抱きしめられる…温かい。

「卒業しても君に会いに来てもいいかな?」

私を抱きしめながらあなたは言う。

「もちろん!会いに来てほしい。」

彼を見上げ答える私の唇にそっと触れる…あなたの唇。

えっ、今キスされたの?

混乱する頭。

「ごめん、葵ちゃんが可愛くてつい。」

みるみる赤くなる私の顔。

「……り。」

「え?」

「もう無理っ…抑えられないよ、好き…大好き。」

涙を流しながら告げる。

キスがトドメだった…これ以上好きって気持ち抑えきれない。

たとえまた振られるとしても。


二人の間に少しの沈黙が流れる。

未だ私を抱きしめる彼の口が開く。

「…僕も君が好きだ。」

思わぬ返事に固まってしまう私。

へっ?今好きって…空耳じゃないよね?

彼を見ると彼も赤くなってる。

「…とりあえず離して。」

混乱しながら声を絞り出す。

「嫌だ!離したくない。」

一層強く抱きしめられる。

「嘘じゃない?ホントに?」

見つめながら問う。

「ああ嘘じゃないよ、今更って思うかもだけど君が好きだ。」

ホントだと実感すると涙が止まらなくなる。

「ううっ…嬉しい、全然今更じゃないよ。」

再び唇が重なる…さっきより長く。

甘い空気が流れる。


「遼…。」

彼の背中をぎゅっと掴む。

みんなが見てるけど今はそんなのどうだっていい。

もっと触れていたい、両想いになれたんだもん。

また私の頬を涙が伝う、さっきと違ってうれし涙だ。

「葵ちゃん、大事にするからね。」

熱いまなざしで彼が言う。

彼の体温を感じながら見つめあう。

「うん、よろしくね。」

彼からそっと離れ、上目づかいで言う。

そっと離れる私をあなたは恋しそうに見つめる。

これからは恋人同士でいられるんだね…。

初恋が叶うなんてすごいな…。

あなたのそばで過ごせることは私にとってとても嬉しいことだよ。

弾まずにはいられない心。

「葵ちゃん、行こうか?」

私の手を取り彼が言う。

今までのと違う恋人つなぎで…。

気づけば人まばらになってた、彼に手を引かれ校門を出る。


「葵ちゃん、良かったらこのままどこか行かない?」

「えっいいの?」

「ああ、どこ行きたい?」

「う~ん、お任せしてもいい?」

あなたとならどこでも楽しいに決まってる。

「わかった、おなかすいてない?」

「おなかペコペコ。」

おなかに手を当て笑う。

「じゃあご飯食べに行こっか。」

「うん。」

彼と手を繋ぎご飯屋さんに向かう。

どこに連れてってくれるのかな?

初デート以来いつもカラオケだったから…みんなの時もあれば二人きりの時もあった。

何気にご飯行くの初めて、緊張するな。

彼に手を引かれ夜道を歩くこと数分、着いたのはおしゃれな外観のレストラン。

「入ろうか、おいで。」

彼に続くようにお店に入る。


内装も西洋な感じでおしゃれ。

「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ。」

ウェイターさんが笑顔で言う。

彼と一緒に窓側の席に向かう、彼が椅子を引いてくれる。

「ありがとう。」

座ると彼も向かいに座る。

彼の顔を見つめ微笑む。

「何頼もっか…うーん。」

メニューを見ながら唸る彼。

私もメニューを見て悩む。

ホントにいいのかな?

私たちが住む田舎の割にはお値段が張る、どれも1500円以上だ。

こんな良いレストラン来たことないから困惑する。

手持ち合ったかな?

そんなことを考えながら料理を選んだ。

「決まった?」

「うん、Aセットにする。遼は?」

「僕はBセットにしようかな。」

「すみませーん。」

彼が手を上げウエイターを呼ぶ。


「はいっお決まりでしょうか?」

「AセットとBセットを。」

「セットのお飲み物はどうされます?」

「僕はアイスコーヒーを、葵ちゃんは?」

「私はアイスティーを。」

「かしこまりました、少々お待ちください。」

ウエイターさんが離れる。


「葵ちゃん緊張してる?」

「えっ、なんでわかったの?」

「そりゃ好きだから見てたらわかるよ。」

ポッ!

彼の言葉に顔が熱くなる。

「そ、そうなの?恥ずかしい…。」

思わず顔を手で覆う。

「だめっ隠さないで。」

手を覆う私の手を掴む彼。

「なんで?」

「恥ずかしがる葵ちゃんも可愛いから見てたい。」

きゅんっ

胸がときめく。

あなたはこんなにも私をときめかしてどうするの…。

そっと覆ってた手を下す。

「遼、誰にでもこんなことしちゃだめだよ?」

「しないよ、僕が触れたいのは葵ちゃんだけだよ。」

「……うん。」

彼がじっと見つめてくる。

その視線が恥ずかしくてそらしてしまう。

何とも言えない空気が二人を包む。


「お待たせしました、AセットとBセットになります。」

コトッ

ウエイターさんが料理を置く。

「ご注文の品はお揃いでしょうか?」

「はい。」

「それではごゆっくり。」

去ってくウエイター。


「…食べようか。」

「うん、いただきます。」

来た料理を食べ始める二人。

「んっ!おいしい~っ。」

パスタを一口頬ばって言う。

「よかった、僕のも一口食べる?はいっあ~ん。」

そう言って目前にパスタを巻いたフォークを差し出す彼。

えっ、あ~んとか照れるな…でも嬉しい。

「あ~んっ」

差し出されたフォークに食らいつく。

「おいしい?」

「…うん、おいしい。」

照れながら答える。

「フッ顔真っ赤、可愛い。」

「なっ?1だってあ~んとかするから…。」

頬を膨らませながら反論する。

「ふくれっ面も可愛いよ?」

「っもう!遼だぁ~い好き。」

わざとらしく甘い声で言う。

お返しだよっ、てへっ。

「なっ?!わかったよ、からかってごめん。」

そう言って謝る彼。

「それより食べよ?」

「ああそうだな。」

黙々と食べる私たち。



「ふぅ~っ、食べたな。」

「うん、おなかいっぱい。」

デザートも食べ終わり談笑する。

これからもこんな幸せな時間過ごせるとかもういつ死んでもいい。

それぐらい最高に幸せ。

はぁ~もうあなたが素敵すぎて辛い。

彼を見つめながら思う。

「じゃあ行こっか。」

「うん。」

席を立ち会計に向かう。

「お会計3600円になります。」

お財布を出そうとする。

「あ、おごらせて。」

そう言って私を止める彼。

「えっ、いいの?」

「うん、付き合った記念におごりたいんだ。」

笑顔で言うあなた。

「…じゃあお言葉に甘えて、ごちそうさまです。」

ペコっと頭を下げる。

「うん。」

「3600円ちょうど預かります、レシートになります。またのご来店お待ちしてます。」

会計を済ませ店を出る。

「今日ってまだ時間大丈夫?」」

手を繋ぎながら聞いてくる。

時刻は8時過ぎ…。

「うんっまだ大丈夫だよ、親には今日もしかしたら帰らないかもってさっき連絡したから…。」

「そうなの?」

「うん…帰りたくない。」

彼を見つめながら繋ぐ手に力を込める。

「僕も今夜は一緒にいたい。」

気持ちは一緒みたい…嬉しい。

「じゃあ僕の家来る?」

「えっ?」

「ごめん、いきなりはダメだったかな?」

「ううん、ダメじゃない!いいの?」

「もちろんいいよ。」

「じゃあ夜景でも見に行かない?家はそのあとで…。」

「…うん。」

「行こう?」

手を引き歩き出すあなた。

お泊りか…聞こえてしまうんじゃないかってぐらい鼓動が早まる。

大丈夫かな?色々…。

緊張と同時に浮かれる私、今日は忘れられない日になるな…。

手を繋ぎ夜景を見に行く私たち…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る