第1話

文化祭明けの月曜日。

授業が終わった私は遼先輩の教室へ向かう。

「遼先輩!」

「葵ちゃんおはよう。」

私に気づいた先輩が近付いてくる。

休み明けで彼の顔を見たらやっぱりときめく、恋ってこんな感じなんだね。

彼と会うだけで幸せ、もっと仲良くなりたいな。

「先輩…。」

「葵ちゃんはもう授業終わったの?」

「うん、先輩に会いたくて来ちゃった。」

「そうか、ありがとう。」

頭ポンポンする先輩。

「なっ?!」

赤面する私。

先輩のこういうとこが好き。

「先輩、そんなことされたら勘違いしちゃうよ?」

「勘違いって?」

「やっぱなんでもない。」

「そう、女の子に優しくしたらダメかい?」

先輩ちゃんと女の子として見てくれてるんだ、嬉しいな。

「駄目じゃないです。」

「なら良かった、葵ちゃんとは仲良くしたいから。」

きゅん!

先輩の言葉に逐一胸がときめく。

先輩はなんでこんなにも私の心を鷲掴みするの…好きが止まらなくなっちゃうよ。

「私も仲良くしたいです。」

「じゃあ先輩じゃなくて遼って呼んで?」

「…遼。」

「うん、葵ちゃん。」

そう名前を呼ぶとぎゅっと抱きしめられる。

「なっ!遼?!」

「ん?」

腕の中で困惑する私。

なんでもないかのような遼。

「みんなが見てる。」

「あ~ごめん。」

謝りながら離す。

「遼…今好きな人とかっているの?」

思わず聞いてしまう。

こんなにされたら両想いかもって思ってしまった…。

「今はいないよ。」

「そうなんだ…。」

安心すると同時にちょっとショック受ける。

今はまだ好きになってもらえてないのか…でも絶対好きになってもらうんだ!がんばれ私。


キンコンカンコーン

チャイムが鳴る。

「あ、もう授業始まるね…また明日。」

そう言って手を振り彼と別れた。


どうしたら振り向いてもらえるかな?

帰り道、どうしたら両想いになれるか考える。

家に帰り眠るベッドの中でも考えるのは彼のこと。

それほどに彼が好きになってしまった。

しかも初恋なのだ。

右も左もわからないけど頑張る私。

まずは彼をデートに誘わなきゃ。

彼ともっと仲良くならないと話にならない…ほんとは今すぐにでも想いを伝えたい。

ただ成功したいから慎重にいかなきゃ、色々考えてるうちに眠りにつく。


ピヨピヨ

朝だ。

今日もまた授業終わりに彼に会いに行く。

「遼、また来ちゃった。」

「おはよう、そういえば連絡先交換してなかったよね?」

「へっ?そうだね、教えてくれるの?」

「うん、いいよ。」

そうして連絡先を交換する。

「いつでもメールしてな。」

「うん。」

彼の連絡先ゲットできてハッピー。

「葵ちゃんってカラオケとか行く?」

「え?あまり行ったことない。」

「そうなんだ…じゃあ今週の土曜日行かない?」

「いいの?」

まさか彼の方から誘ってくれるなんて!

すごい嬉しい、でも多分みんなでだよね…。

「いいよ、詳細はメールするよ。」

「うん、じゃあ今日はそろそろ帰るね。」

「ああ、気を付けてね。」

「うん。」

今日も彼と会えて幸せ。

しかも連絡先に、遊ぶ約束もゲットできた。


家に帰りくつろいでると

ピロリロリンッ

携帯が鳴る、メールが来たみたい。

「ん?誰だろう。」

メールを確認する。

「え?遼から!?」

なんと彼から早速メールが来た。

『葵ちゃんメアドありがとう。土曜日13時に駅で大丈夫?』

ホントに遊べるんだ!

『うん大丈夫。楽しみにしてるね。』

返信する。

『僕も楽しみだよ。』

彼と休みに会うの初めてだ。

すごい楽しみ!

少しでも振り向いてもらわなくちゃ。


土曜日まで毎日彼に会いに行って少しずつ打ち解けた。

そして約束の土曜日。

「何着ていこう?」

服を並べ悩む。

好きな人とのお出かけ、少しでもかわいく思われたい。

悩みに悩み白いワンピースに決めた。

そして駅へ向かう。



駅につくと彼がもう待ってた。

でもいるのは彼だけ…。

もしかして二人きり?

やばい、ドキドキしてきた。

深呼吸をし彼の元へ近付く。

「遼、待った?」

「いや今さっき来たとこだよ。

そのワンピ似合ってるね、かわいい。」

褒められて赤面する。

「ありがとう。あれ、みんなは?」

「みんな?僕だけだよ。」

「そうなんだ…。」

「僕と二人きりじゃ嫌かい?」

「全然嫌じゃないよ。」

やばいホントに二人きりなんて。

これってデート?しかも初デート。

ドキドキしすぎて心臓飛び出しそう。


「じゃあ行こうか。」

遼はそういうと私の手を握る。

「…うん。」

手汗大丈夫かなぁ。

彼と手を繋ぎカラオケへ向かう。

心臓持つかな?カラオケって密室だし…。

彼の手の感触を楽しみながら歩く。



カラオケにつき部屋で二人きりになる。

「何歌おうか?」

彼がデンモク片手につぶやく。

「これにしよう。」

そう言って彼は曲入れる。

彼の歌ってる横顔に見惚れる。

歌もうまいとか反則だよ…。

「はぁ~、葵ちゃん何歌う?」

歌い終わった彼が聞く。

「うーんなににしようかな。でも音痴だから恥ずかしい。」

「全然気にしないよ。」

「ほんと?」

「もちろん。」

笑顔がまぶしい。

音痴だけど引かないみたいで安心…意を決しラブソングを入れる。

彼の顔をチラ見しながら歌う。

最後の歌詞を歌いそのままマイクで彼に向けて

「遼、好き。」

想いを告げる。

「ありがとう、ちょっと考えさして。」

「…うん。」

なんか気まずくなってしまう。

まだ告白するつもりじゃなかったのにもう抑えきれなくてつい…振られちゃうのかな?

落ち込みうつむく私。

「ちゃんと考えるから、そんな顔しないで。」

頭を撫でながら彼が言う。

「うん。気を取り直していっぱい歌おうっと!」

カラ元気で言う。

「そうだね、楽しもうね。」

彼が微笑む。

彼の笑顔に胸が締め付けられる。

でもせっかくのデートだから気を取り直して楽しんだ。


数時間後

「はあ~、いっぱい歌ったね。」

「うん、楽しかった。」

「じゃあ行こうか。」

また私の手を握る。

好きって言った後でも手を繋いでくれるなんてもしかして脈あり?

それとも天然なだけなのかな?

彼の体温を感じながら歩く。

歩きながらぎゅっと強く握るとぎゅっと握り返してくれる。

もう好きすぎる、色々とずるいよ…。

こんな人に出会ったの初めて。


「じゃあ気を付けてね。」

「うん、ありがとう。」

駅につき彼と別れる。

色々とあったけど初デートは無事終えれた。

最高に楽しかったな…。

バスに揺られてるとメール音がする。

『今日は楽しかったね。気持ち伝えてくれてありがとう。

嬉しかったよ、返事はもう少し待ってね。』

嬉しい、返事期待しちゃうな。

『私も初デート楽しかった。いきなりの告白ごめんね、どんな返事だとしても仲良くしてもらえるといいな…。』

気まずくなるのは嫌だもん。

せっかくできた好きな人だもん、仲良くはいたい。

彼からの返信はない、不安に思いながら眠りにつく。


彼から返信ないまま月曜日。

何気ないメールも来なくなっちゃった…。

伝えるの早すぎたかな?

まだ出会ってひと月経ってないもんね。

人を好きなると自分が自分じゃないみたい、理性が効かなくなる。

気まずくても一目でいいから彼の顔が見たい。

今日も彼の元へ向かおうと席を立った時。

「葵ちゃん。」

教室の入り口に彼がいる。

急いで彼の元へ近づく。

「遼…。」

「今話せる?」

「うん。」

「ちょっと場所変えようか。」

私の手を引き歩き出す。


「ここならいいか…。」

彼に手を引かれ校舎裏へ来た。

「話って何?」

薄々わかっていながら問う。

きっと返事なのだろう…鼓動が早くなる。

「こないだの返事なんだけど…。」

「うん…。」

ドキドキッ

より一層早くなる鼓動。

「気持ちは嬉しかったんだけどごめん。」

「あ…そうですか。」

悲しくて涙が頬を伝う。

「泣かないで、葵ちゃんいい子だから僕の他にもいい人いるよ。」

涙をそっとぬぐう彼。

彼の指先の熱を感じますます涙が出る。

「ううっ…これからも仲良くしてくれる?」

「もちろん!僕たち友達だから。」

「…良かった、私もう行くね。」

そう言うと足早にその場をあとにする。

彼の顔を見てるともっと泣いてしまいそうだから…。

振られちゃった…初めて好きになった人だったのに。

でも彼とはこれからも会える、めげない!

また告白するんだ…きっと焦りすぎたんだ。

家につきベッドへ倒れこみ一晩中泣いて過ごした。

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