来世ではあなたと…。

蒼空

プロローグ

「今でも好き。来世は…。」

空を見上げつぶやく。

あの人に貰ったネックレスを握りしめながら…。


始まりは今から十三年前。

私は霧島葵、高校一年生。

季節は秋、今週の土曜日は文化祭。

「当日双子コーデしようよ。」

定時制高校の夜間科に通う友達が言う。

「いいよ。」

「じゃあ、当日服渡すね。」

友達の優が服を貸してくれることになった。

「わかった。」

「じゃあ土曜日ね。」

「うん。」

優は教室へと戻り私は校門へ向かう。

そう、優は夜間で私は昼間科。

別々になってしまったのだ…でももう秋。

慣れてしまった。

友達とは言っても小学校からのただの幼馴染。

親友とまでは思ってない。

夜間の文化祭は楽しみだけど優と一緒なのはちょっと憂鬱。

ため息をつきながら帰路につく。


そして土曜日。

ガヤガヤッ

みんな盛り上がってる。

昼間科の文化祭が終わり夜間科の時間。

憂鬱な気分で優の元へ向かう。

「葵!はいこれ。あたし係あるからごめん。」

そういうと服を渡しバタバタと去っていく。

トイレで渡された服に着替え体育館へ向かう。


一人観客席に座り優を待ちながらステージを見る。

「あ、霧島!」

ステージを見てると声をかけられる。

「森屋…。」

声をかけてきたのは同中だった森屋彰。

「一人か?」

「ううん、優待ってる。」

「そっか。」

そういうと隣に腰を掛ける

「森屋は一人?」

「いや先輩たち来るの待ち。」

「そうなんだ…いいな。」

「一緒に見ようぜ。」

「え?いいの?」

そう聞く私に森屋は笑顔で

「もちろん。」

「じゃあそうする。」

成り行きで一緒に彼の先輩たちを待つことになった。

数分後

「森屋、待たせたな。」

彼と私の前に三人の男が立つ。

「先輩。」

「あれ?森屋の彼女か?」

「違います、ただの友達です。」

私は強く否定する。

「ははっごめんな。」

「いえ、大丈夫です。改めまして霧島葵です、よろしくお願いします。」

「どうも、俺は大輔。よろしくな!」

先ほどの先輩が名乗る。

「僕は遼です。よろしくね。」

そういった彼の笑顔に胸がときめく。

「俺、達也。」

もう一人の先輩も名乗る。

しかし遼先輩に見とれてた私の耳にはいまいち届かなかった。

「へっ?よろしくです。」

「葵ちゃんも一緒に見よう?」

遼先輩が誘ってくれる。

いきなり下の名前を呼ばれ胸がきゅ~んとなる。

一目惚れだった…。

「もちろん一緒に見ます!」

誘われたのが嬉しくて元気に返事する。

私の返事を聞き隣に座る先輩。

近くてドキドキ。

そして優を待つ間みんなでいろんな話をしつつ楽しんだ。


「葵、もう帰るから服返して。」

優と合流してすぐ切れ気味に言われた。

「わかった。」

トイレで脱いで渡す。

「男がそんなに好きなんだね、もう絶交ね。」

一方的に言って去ってく優。

絶交になったけど正直ほっとしてる。

いけ好かなかったし女王様みたいにふるまってたから縁切れてよかった。

優と別れて先輩たちのとこに戻る。

「葵ちゃん、大丈夫?」

戻った私に遼先輩が優しく聞いてくれる。

「うん、大丈夫…友達と絶交しちゃったけどね。」

そう苦笑いする私。

「そっか、でも僕達はもう友達だよ。」

そう言うと優しく頭を撫でる。

「ホント?嬉しい。」

赤面する。

「じゃあ一緒に帰ろうか。」

「うん。」

文化祭が終わり一緒に帰ることになった、しかも二人きりで…。


一緒に校門を出ると

「夜道は危ないから。」

彼がそっと手を握ってくる。

もうキュン死にしそうになる。

今日は最高の日だ。

「ありがとう。」

つかの間の幸せを味わいながら歩く。


駅に着くと私が乗るバスを一緒に待ってくれる。

今日会ったばかりだけどもう彼に夢中になってしまった。

彼の横顔を見つめる。

幸せを噛みしめているとバスが来てしまう。

「バス来たね、気を付けてね。」

「うん、ありがとう。」

そう言ってバスに乗り込む。

バスが発車する、窓越しに彼に手を振る。

彼と別れてバスの中で今日あったことを思い出す。

こんなに胸がときめいた人は初めて…まだ出会ったばかりだけど大好きになっちゃった。

また彼に会える月曜日が楽しみ。

家へ着き彼のこと想いながら眠りにつく。



彼との出会いは些細な出来事だった。

ただ彼と出会った瞬間頭の中で鐘が鳴った。

アプローチする日々が今始まる、あんなことになるとはつゆ知らずに…。

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