美しき絵画のような珠玉の短編集。

 「私」という旅人が見た世界の風景ひとつひとつを、静謐に、けれど圧倒的な描写をもって綴る短編連作。一話一話は短いながら、無駄無く洗練された文章と、読者の想像力をかき立てる魅力的な設定の数々に呑み込まれ、世界の中にどっぷりと浸ることができます。
 旅人が目にする光景一つ一つは、ただ優しく美しいだけではなく、時に厳しく、時に恐ろしくもありますが、けれどその全てに、世界そのものが持つ息吹が感じられて、自分もその中に入り込んでみたいような思いに駆られます。
 文章を読むだけでその光景が色鮮やかに思い浮かべられる、ずっと大事にされてきた古い画集を一頁一頁めくっているような気分になれる素敵な作品です。

その他のおすすめレビュー

秋待諷月さんの他のおすすめレビュー428