安住の拠点にて(ユニット:桐夜)
ドミニア率いるヴェルセア王国艦隊がアクエリアスへ向かいだしたのと、同時刻。
「さぁて……どうすっかねぇ。リルヤ助けんの」
エルピスをかくまった桐夜は、ソファに寝転がりながら今後の展望を考えていた。
ある依頼によって向かった、エリア0“セントラル”の最奥にある異常空間。彼はやむにやまれぬ事情により、“
「焦っちまうなぁ……。分かってんだけど、分かってねぇや、俺。やっぱ
祐也――包國祐也。寧愛の弟にして桐夜の友であり、そして4年前にレプリアによって既に
目の前で届かない――そのような状況が似通い重なった結果、桐夜に忌まわしき過去の記憶をフラッシュバックさせるに至ったのである。
「だが。だけど、あいつが……エシュが言うには、だ」
桐夜は、同じ依頼を受けた
『俺はある意味、あいつのことを信用している。あの死神が、あの程度で死んでしまうような奴ではない、と思えるくらいにはな』
桐夜としては、なぜかこの言葉が単なる気休めだとは思えなかったのだ。
「つーて。分かってても、急ぎたくなるな。幸か不幸か、俺はあの異常な時間の空間への対策が出来る。あのガキ……いや、レプリアと同等かそれ以上の悪意を秘めた『悪竜王』に、強化を強制解除させられたことで」
一度“時間加速対抗魔術”を解除させられ、そしてその後自力で同等の効果を持つ異能を発動した桐夜だからこそ、仲間――「リルヤ奪還、かつ異常空間再攻略」における最大の障害のひとつに対する策のメドが立っていたのだ。
「俺の持つ“青”と“緑”――それがありゃあ、何とかなる。範囲もある程度広げられるから、リルヤや、もしかしたら来てくれるかもしれねぇ仲間を
桐夜は、仲間二人と同時に三人がかりで倒したあの竜の存在を思い起こす。
一度は打倒したとはいえ、完全にトドメを刺せた手ごたえを感じてはいなかったからだ。
「いずれにせよ、俺は絶対に行かなくちゃな。あんな依頼が出されるくらいなんだ、何かでけぇことがこの世界で起こるのは明白だ」
「そうね。けど、必ず帰ってきてね? 桐夜」
「ああ」
ふらりと寄って話しかけてきた寧愛に向けて、桐夜は確固たる決意を見せた。
***
そしてその様子を、上空にいる謎の機体が捉えていた。
「見事な“希望”だ。導きを指し示さずにはいられない、な」
謎の機体は、搭乗者たる謎の青年に告げる。
「彼に助力せよ。私の支援も行う。彼を、彼が求めるものまで導け」
「ああ」
一瞬のち、謎の青年はいずこかへと転移したのであった。
***
「感謝する」
風呂から上がってきたエルピスが、桐夜と寧愛のいるリビングに立ち寄る。
「……服はこちらで見繕うから、すぐに脱衣所まで戻って」
「ん?」
「それが人間の“しきたり”なの。さっ」
寧愛がエルピスを強引に押し戻す。
「……ただでさえあなた、
「んあ? 智香?」
ふと聞こえた言葉に、桐夜が体をむくりと起こした。
「智香ねぇ……。あいつ、元気にしてっかな? 俺が……俺らがいなくなってから、まだ“ディケー”にいるんだろうけど」
今はいずこにいるのか分からない、そんな女友達に思いをはせる桐夜。
「……ん?」
と、玄関からドンドンドンとノック音がするのを察知した。
愛銃を抜き、何でもないような足取りで玄関へ向かう桐夜。
「……安心しろ。邪悪な気配は無い」
エルピスが呟くが、桐夜は構わず即時戦闘可能態勢で玄関に向けて声を放つ。
「どちら様ですか?」
だが、応答は無い。
桐夜は寧愛と素早くアイコンタクトを行い、退避完了を確認すると玄関扉を乱暴に開け放った。
「!?」
桐夜の表情が驚愕に染まる。
間違いなくノックの主がいるはず――だというのに、誰もいない。
「突然の来訪、失礼つかまつる」
声は、桐夜の左耳元から聞こえた。
「“希望”の気配を掴んだがゆえ、こうして参った次第だ」
「…………何もんだ、てめぇ」
扉が開く方向であるはずの桐夜の左そばに、一人の青年が立っていたのだ。
その青年は、自らの名を名乗る。
「俺の名は、シューヤ・レクセ・レーゼ・ゼデキム=アルトヴェレア。その望みを叶えるべく、遣わされた者だ」
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★解説
南木様が執筆された、こちらのエピソードの桐夜側視点における続き。というか、「続きの続き」。
https://kakuyomu.jp/works/16817139558839696935/episodes/16817330647784979894(南木様作)
https://kakuyomu.jp/works/16817139558351399728/episodes/16817330647814372001(有原作)
桐夜視点のストーリー。リルヤ救助(と厄竜討伐、兼神竜の卵確保)は既定路線です。
桐夜の原作者である私だからこそ書ける情報がゴロゴロあります。桐夜君、偽りの白に堕ちる前は純真な青年でしたよ、ええ。
あと、エルピスの外観は決定させていただきました。
後付けながら理由を付すとすれば、「特に一緒にいるであろう二人とやり取りしやすいために、何らかの手段で二人の特徴を把握して“共通の友人”である智香の姿を真似た」ということにしておきます。
ぶっちゃけた話、智香さんなら「一緒に写り込んだ写真がある」可能性大なので、特殊能力に頼らないのであればこういう方法で知覚することも十分に可能かと。
最後に、仮にも女性を、風呂上りとはいえ全裸で出したのは申し訳ない。何とか取り繕うならば、桐夜君は全裸姿を見ていない……ということで。
話題に出てきた智香さんの情報は、こちらに載せておきます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139558648925327/episodes/16817330647861252812
ついでに、桐夜君が挙げた"レプリア"の情報を一部まとめた敵ユニット(ずばりレプリアの一員)も。
https://kakuyomu.jp/works/16817139558351554100/episodes/16817330647640039319
そして、謎の機体こと桜付きの搭乗者。
名前に関してはある程度方針を決めていて、「どこかに『レーゼ』を入れる」のは確定事項でした。
構想中の作品の主人公名に近い名前にする……あっ、言っちゃった。でも消しません。自主企画参戦目的にだいぶ近い核心情報だけど、まあいいよね、うん。人さまの自主企画で何やってんだって話だけど。それはおいおいの話として。
なので、以下のエピソードの「謎の青年」部分にシューヤ君のフルネームを書いてあります。
https://kakuyomu.jp/works/16817139558351399728/episodes/16817139558370773713
そうそう、今のうちに。
南木様の近況ノートでも書きましたが、「厄竜アジダハーカ」討伐では有原陣営以外からも参戦ユニットを募っています。報酬(神竜の卵)は完全にもらいうけるとしても、有原陣営だけで戦闘を独占するのは何かもったいないので。
期限は予定不明瞭につき切れませんが、「参戦意思がおありでしたらお早めに!」とは書いておきますね。
とりあえず、桐夜君たちも24時間ほどは作戦を練ると思います。
アジダハーカ討伐は、FFXX本隊と合流した上で行うので……。
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