あるワガママ乙女の憂鬱(ユニット:サン=スィル)
「あーっ、もうっ!」
エリア6-3、常闇の要塞にて。
一人のワガママな乙女は、今日も今日とて収まらない
おかげで配下であるアンデッドメイドたちには、余計な仕事がどんどん増えていく。もっとも、そんなものを気にする乙女……死神サン=スィルではなかったが。
「なんか知らないけど……イライラするっ!」
今の彼女は、荒れに荒れていた。
あるセールスマンに棚を売りつけられ、にもかかわらず片付けが進展しない……というのは理由の一部であるが、それをものともしないほどに大きな比率を占める理由があった。
「なんで…………なんで、あいつの顔がチラつくのよっ!!」
それは……同郷たる、女性と見まがう美少年――死神リルヤのことが、頭から離れなかったのである。
「あいつのことなんて、嫌いなはずなのにぃ……。それもどうして、今になって?」
彼女からすれば、何の脈絡もなく“
***
「…………」
だがそれは、超俯瞰的な視点で見れば間違っていた。
「……危機を伝えるのは、私の義務である。曰く、『乗りかかった舟』だからな」
なぜならば、謎の機体が
そもそも謎の機体は、どのような経緯でリルヤが危機的状況に陥ったかすらも見通している。“必要以上の介入によって女神リアの成長を妨げる結果を導くこと”こそ不本意であるが、それでも可能な限り表沙汰にならない介入であれば構わず行うのだ。
……余談ではあるが、この世界における主要な危機の数々にも目を光らせている謎の機体は、女神リアの属する神族におけるしきたりの一切を無視してでも解決を目論む意思を有している――悪い言い方をすれば「“不法侵入”をしているので、その中でどんな乱暴狼藉ともとれる振る舞いをしても知ったことではない」となる――が、それはまた別の話である。
「望むならば、手前までは導くとしよう。だが、縁深き者を助けるのは――己の力で、成し遂げよ」
謎の機体は、そう短く呟くと――スィルの脳裏に、警告を送り続けていた。
***
「……決めたわ」
警告を受け続けて、しばらくの時が経ち。
座っていた椅子から、すくりと立ち上がるスィル。
その様子を見たアンデッドメイドが、彼女の意を問うように顔をこちらに差し出すと――スィルは、決然と叫んだ。
「探すのよ! リルヤを! しらみつぶしにこの城塞を、いえ……世界中を、木の根っこまでほじくり返してでもっ! それで無事に見つかったら、文句をいっぱい言いつけてやるんだからっ!」
死体を操る彼女の能力であれば、物量に飽かせて世界中を探ることも困難ではない。見つかるまでには時間がかかるだろうが、それでも死体という死体を操れば、いずれ探し出せる。
そういった彼女の予想は論理的で――しかし、その方法では絶対に見つからない場所にリルヤがいることを、彼女は知らない。
「…………」
なればこそ、謎の機体が導く必要がある。
とはいえ表立って介入しては問題が生じかねないため、
「私は示す。今汝共に在る霊竜、彼が出でた地に再び向かえ。そこにいる乙女に、『想い人の元へ導く』と告げよ」
謎の機体は短く、しかしそれゆえに
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★解説
フラグ。
南木様から提案された「アジダハーカ討伐に、
桜付き介入案件。つーかぶっちゃけ桜付きがいないと合流させられないので、有原としてはお構いなしに介入させる。直接戦闘はしていないからね。
あと、そもそも桜付きは舞台装置なので、舞台を整えるために最大限活用するのは「何を当然のことを」というもの。使えるから使う、ただそれだけ。
ただし、さすがに直接導くのは物語的にいささかつまらないため、“ある人物”を連れて行く。
今、霊竜――ヴィグバルトを連れているFFXXの部隊には、誰がいたっけ?
時系列は元より、通過・通過予想エリア的にも隣り合っているので問題なし。最悪テレポートすれば万事解決。
戦闘においては多用厳禁な桜付きだが、舞台を整えるためならばいくらでも多用する。だからこその“
作中では同時と言えないが、メタ視点では同時多発的にイベントが勃発している。さばく情報が多くて、とっても楽しい(錯乱)
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