“ 殺されたい少女 ” によって引き起こされる、異色の青春スリラー!

スリラーは、凶悪なシリアルキラーやテロリストとの命懸けの攻防と、その果てにある主人公の勝利(ときに犯罪者側が主人公なこともある)が、刺激的な恐怖演出で描かれるのが典型のエンタメジャンルだ。

『柏恵美の理想的な殺され方』も間違いなく、学校を舞台に青春真っ盛りの中高生たちの命がやりとりされる、スリラー小説だと言える。

が、タイトルにもなっている柏恵美という存在が、この作品をとりわけ特異のなものにしている。

彼女は、一切の救いも逃げ道も希望も断たれた絶望に追い込んで殺される事を、心から求めている。
ゆえに自ら、極上の絶望をもたらしてくれるだろう殺人者候補に接触する。

「私の名前は柏恵美。君の、第一の犠牲者だ」

彼女が芝居がかったお決まりの自己紹介をするたび、私は震えるほどの興奮を覚えるようになった。
それくらい柏恵美というヒロインは特別で、刺激的で、魅力的なのだ。

彼女を殺そうとする者。
彼女を守ろうとする者。
友人を殺人鬼にするまいと足掻く者。
殺人犯という特別な肩書を欲する者。

作中の少年少女たちは柏恵美との出会いによって各々の秘めた感情や欲望を喚起され、協力あるいは敵対する。
これぞ、彼女の強烈な魅力と影響力の証左だ。

錯綜する思惑、衝突する願望。
やがて起きる――惨劇。
すべての中心に、柏恵美はいる。

目まぐるしく切り替わる視点によってヒリヒリするような不安と緊張を煽られ、ページを繰るが止まらなくなること請け合い。

きわめて高純度な(正しい意味での)サイコパスと多感な中高生たちとの接触によって引き起こされるスリリングな非日常を、ぜひご堪能あれ!