日々の生活の中で、ささやかなこだわりというのは、誰しも何がしか持っているものではないだろうか。
本作の主人公、最上川氏はそのこだわりが少々多い人物だ。
例えばタバコ。
彼にとってタバコは中毒的にニコチンを摂取するものではない。
味と香り、喫煙という行為そのものを、時間をかけて風流に楽しむ。
そんな彼のこだわりに満ちた日常を、このお話では垣間見ることができる。
コーヒーに紙、お酒、ソフトクリーム……
最上川氏のこだわりは、留まることを知らない。
だがそれを他人に押し付けるでも、語るでもなく、ただその時間にゆったりと身を浸す。
彼はまさしく理想の紳士であり、小さなレディにも礼儀を忘れないジェントルマンなのだ。
このお話に派手さはない。
しかし読み出せばたちまち最上川氏の魅力に感銘を受けると共に、日常のちょっとした時間を上質なものにしてみたくなる。
特に、人より少しこだわりの強い好事家さんは、ぜひご一読を。
私のように、モガさんの日常に魅了されるに違いないのだから。