「昔話の変なアイテム、全部うっかりな宇宙人のせい」説

冒頭から突然謎のSF世界にぶちこまれる本作、どうやら、主人公の発言のみを自動的に記録した「オートログ」なるものを読まされている、という設定のようです。

「いやいや、そういうアンドロイドギャグはいいから」とか書いてあっても、肝心のギャグの中身はわからない。そんな独り語りの落語のようなリズム感と、SF的世界観の奇妙な融合がクセになります。

いわく、「マブーのお尻の色」あるいは「惑星ゴゴゴの人工太陽の色」をした、”ある地球の食べ物と形がそっくりな何か”が見当たらないらしく……。

一見、意味わからん固有名詞の羅列なんですが、あらためて「あの桃が、流れることになった物語」というキャッチコピーをたしかめると、だんだん理解が追いついていく。

「桃太郎」本編の前日譚として、「なぜ赤子を収容した桃が川から流れてきたのか」にフォーカスして日本昔話要素を吹き飛ばし、突飛な物語を書き足しているのが面白い。

謎の登場人物たちが謎の世界観で暗躍する怪作。作者の造語センスがピカイチで、ひたすら垂れ流されるモノローグから事態を読み取らせる筆力にも光るものを感じます。オチの付け方にもニヤリと笑ってしまいました。

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