そんなヒーローも、悪くない



 今日も町は賑やかで平和だ。


 町を守っていると、急にダンジョンから魔物が溢れてきたり、ドラゴンが急に襲ってきたりなんて色々ある。

 人生は山あり谷あり。楽しいこともあれば、悲しいこともある。

 出会いと別れももちろんあるもんさ。


 後継者シンヤ君とミコ君は、自分の目的のためにこの町から旅に出た。

 後継者は断られたけど、まだまだチャンスはある。

 また戻ってくるという言葉を信じて。その時にアピールすればいいだけ。



「ああ、そういえば、この町に勇者が来てるんだって?」

「え? 勇者ですか?」

「ほら、古龍エルダードラゴンを倒せる勇者。町中でその話で持ちきりの。先日のドラゴンとは違って、山さえ吹き飛ばす古龍とか、戦ったら死んじゃうよねー」

「……それ、ハシタダさんのことですよ?」



 止まる。

 いま、何を言われたのかな?


「先日のドラゴンのことですよ、それ」


 ……え。

 まさか、先日倒したドラゴン。あれ古龍エルダードラゴンだったの!?


「あ、ハシタダさんだっ!」

「ほら、見て。あの人がいつもこの町を守ってくれてるんだよ」

「町長の仕事もちゃんとやれよー」


 私の驚きをよそに、町を歩いていると町民からそんな声をかけられる。

 私が町を守ることは、町の幸せに繋がるのだと再認識した。



「ハシタダさんは、町長のくせにヒーローなんですよ」



 英雄や勇者に興味はない。

 というか、こいつらはドラゴン退治とかやらずになにやってんだろう。

 あいつら、何もしないから俺が担がれるんだよ。




 だが――



「そんなことはどうでもいい。私は今日も町を守るだけさ」

「町長として町守るのも仕事だと思いますけどねー」

「……さ、今日も門番頑張りますか」




 ――町を守るヒーローも、そう悪くない。







                    ――Fin

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そんなヒーローも悪くない 〜ハシタダさんは、今日も門番を頑張る。町長の仕事? なんだそれ、うめぇのか?〜 ともはっと @tomohut

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