雨の雫と陽光が……運命を変える初恋を映し出す。
- ★★★ Excellent!!!
ある秋の日に出会った雨ツ国の姫……信乃と、陽ノ国の旅商人……陽生。
陽生は信乃の工房にあった雨の宝石、雨晶に心を奪われ、買いたいと申し出るのだが、雨の加工士として修業中の信乃はそれを売るわけにはいかない……しかし、陽生の勢いに押されてしまい一つの雨晶を渡すことに……
と、ここまでが第一話の冒頭部分です。
明らかになる陽生の正体。雨ツ国の暮らしと雨の加工を生業とする職人たちのこと。そして、少女たちの初恋と髪のこと……
物語が進むにつれて明らかになっていく、信乃を取り巻く世界のことは、読者の皆様の心へ純に、切なく、静かに、激しく迫ってきます。
作品内の描写も非常に綺麗です。植物や宝石などがよく比喩に用いられている印象で、終始透き通った雰囲気が満ちています。特に雨の宝石、雨晶の描写が素敵でした。雨音が聞こえてくるような感覚を楽しんでいたら、今度は乱反射する雨の雫が見えるような気がしてくるのです。
打って変わって陽ノ国の様子もまた素敵ですよ。
雨ツ国、陽ノ国、両国の様々な人たちに温かく見守られながら、自分の足で恋焦がれる人のもとへ走りだす信乃の姿。その成長。貴方も見届けてみてください!!