演劇の稽古に「エチュード」というものがあります。
この語はフランス語で、英語の「スタディー」に相当するのですが
演劇では、表現力の稽古として重要視されている方法で、つまり「即興」のことです。
映画やTVドラマとは違って、演劇は、観客の前でおこなう〈生モノ〉、舞台の上では常に何が起こるかわかりません。だから、稽古でエチュードを行うのです。
そして、実際の本番において、部分的に役者が「エチュード」で遊ぶ芝居もあります。
さて、この物語は、まさに「エチュード」そのもの、しかも、部分的ではなく、全てが「エチュード」なのです。
だから、どんな風に展開するのか、作中人物たちにも読めない。
つまり、それを観ている(読んでいる)我々にもわからない。
そんな、物語を読みたいあなた、この「エチュード」的物語はいかがでしょう。
最近、テレビや動画などで即興劇が話題になっているのを見かける機会が増えた気がします。
こちらは、まさに旬の即興劇をテーマにした青春物語です。
特筆すべきは、この物語が二重の構造になりながら、少しも一体感を失わず、むしろ上手にリンクさせながら骨太な物語を作り上げていること。
舞台上での即興劇。そして、舞台を降りたところで繰り広げられる現実の物語――。この二つの場面を同時進行で描き分けながら、しかも乖離することなく、しっかりと編み上げているところに、作者様の確かな力量を感じました。
また、内容も素晴らしいです。
思春期特有の痛みもありながら、心の傷を仲間と分かち合い、共に乗り越えるうちに新たな友情や恋が芽生えていく。そうした青春がみずみずしく描かれています。
私も読ませていただきながら、主人公たちの夢や恋を応援せずにはいられませんでした。
皆様も、即興劇の果てにどんな結末が待っているのか、見届けてみてはいかがでしょうか。
この作品を拝読してまず思ったのはオリジナリティがすごいということです。
即興劇がテーマの作品なのですが、皆さま即興劇を御覧になった事はありますか?
即興劇とは台本無しの演劇です。
物語の展開は全て演者に委ねられ、一人一人の演者の行動如何によってストーリーが大きく変化していく。演者は空気を読んで流れにそうのもアリですし、自身が新しい潮流を作り出すのもアリ、みんなで個性豊かなオンリーワンの物語を作り上げていくそれが即興劇の醍醐味かもしれません。
本作は即興劇のテーマパーク『即興シネマパーク』を舞台として、様々な人間模様が描かれます。夢を乗せて演じる者もいれば、演技に救いを求める者、楽しく演じたい者、演者の数だけそこに理由があるのかもしれません。
とにかく即興劇のテーマパークという物語の舞台そのものを用意された作者様の発想に驚かされています。
演じ関わることで生じる人間模様を細かく描きながら、物語りは丁寧に編まれていきます。
即興劇とはある意味駆け引きかなとそんなことも思いながら。
あなたもエンターテイメントの世界覗いてみませんか?