第36話 エンディング(フリューエル・雷鳴)
~語り手:フリューエル~
さあ!100レベルになりました!今こそ星女神の神殿へ!
というわけで、冒険者協会と連携をとり、星の中心の神殿へ。
船に乗って旅の最中です。
この船は広いので、雷鳴は外で風に当たっています。
ミシェルは船室で編み物。私はヴェルと2人で食堂にいます。
「ヴェル、今思い出しました。あなたがまだ悪魔だった頃」
「俺は人間に対して、天使に対して慈しみの心を持った。もう悪魔には戻れんよ」
「ええ、わかります。今のあなたにはあの焼けつくような感情はない」
「嫌か?」
「いいえ、そのかわり、巌のような心で私を支えてくれます」
「俺も、お前の冷静さにはいつも助けられている」
「よく冷徹さと言われますが」
「それは勘違いしているだけだ」
――――――――――。
「………また彼に会えると思いますか」
「………さあな。慰めは言わん」
「………あ、2人共、ここにいたんですね」
赤いマフラー(完成したようです)を持ったミシェルが食堂にやって来ました。
「そのマフラーは雷鳴の分ですよね」
「そうです先輩。セーターとお揃いですね」
「………喜ぶと思いますよ?」
「はい、今から渡してきます」
そう言ってミシェルは船べりに出ていきました。
私も後で渡しましょうかね、小さな
「ヴェルにはもう渡しておきましょうか、はいこれ」
「うむ………いい記念だな」
「もうすぐ記念になるのですね………」
「クラーケンが出たぞー!」
「!行くか?フリウ」
「放っておいても外の2人が一蹴しますよ、ヴェル。私たちは全員100レベル。その上天界や魔界での能力もある程度解放されているのですから」
外の物音を聞いていると、間を置かずに歓声が聞こえてきました。
「スゲェ、クラーケンを一撃で!」
という声が聞こえてきます、やっぱりね。
クラーケンを仕留めたらしい雷鳴―――赤いマフラーをしています―――とミシェルが食堂に入って来ました。
「お疲れ様です雷鳴。これ、お守りです。ミシェルにも」
「ありがとうな2人共。亜空間収納に大切に保管して、魔界に帰ったらサラマンダーは自室で保管するよ。セーターは大事に着るから」
微笑んで言う雷鳴、私も微笑んで「そうしてください」と言いました。
~語り手:雷鳴~
ううん、天使たちが別れの気配にセンチメンタルになってるな。
俺としては「いつかまた会えるさ」なんだが。
まあ、あと許された期間を楽しむとしよう。
ちなみに食事は船専属のコックが作るので、俺やフリウはお役御免である。
それだけは、ちょっと寂しいかな?
♦♦♦
3日後、神殿―――惑星グロリアの核―――が見えてきた。
なるほど、黒いオーラが濃いな。
けど、あれを浄化するのはいいが、聞いてないものが神殿の周囲を飛んでいる。
4体のウィンドドラゴンだ。黒いオーラに汚染されている。
だがその他にも厄介なものがいるようだ。
先頭の船から、俺たちに対して伝令が来た。
「クラウン、と名乗る男が神殿を占拠し、竜たちに神殿への侵入者を阻むように命令しているようです。自分は100レベルだとも申しております」
俺たちは顔を見合わせた。
「中途半端だった敵の首魁が出て来てくれたんだ。やることをやればいいだろ」
「そうなのですが人間相手では………」
「それなんだけど、ちょっと気配を探ってみ。100レベルのカラクリが分かるから」
「………ん?神殿の中央から瘴気が―――戦魔ですね。まさかクラウンという男?」
「ああ………嫁さんの堕天使を封印されて怒り狂ったんだろう。悪魔に堕ちたんだ」
「堕天も昇天も能力が10倍になりますからね。レベルも10倍………」
「元が100レベルじゃないから、神殿の占拠が今まで占拠できなかったんだ」
「なりたてで大して力の制御も出来ていないようですね、気配で判ります」
「そう、そんな悪魔楽勝だ。しかも人間じゃないから容赦する必要なし」
「なら、脅威はドラゴンだけですね」
~語り手:フリューエル~
「伝令さん。ドラゴンは、知性のない種ですか?」
「はい、そうです!というか、いくら100レベルでも知性のあるドラゴンを操るのは無理ではないかと思う次第です!」
「納得だな」
「じゃあ俺たちはドラゴンをまず倒す。1人1殺だ」
「わかりました。その後合流して、神殿の浄化ですね」
「浄化は天使組に任せる。俺はクラウンを倒そう」
「お願いします、雷鳴」
「じゃあ、そういうことで」
「ええ。では行動開始です!」
私の号令で、みんなはそれぞれ狙い定めたウィンドドラゴンに向かいます。
私は一際大きな個体に向かいます。
翼で近寄っていくと―――私の翼は純白の3対6枚のものに戻っています―――暴風域に入りました。大丈夫、今の私の翼ならそれぐらい平気です。
ある程度近寄るとウィンドドラゴンは風のブレスを吹いてきましたが、慌てずにディスペル(解呪)します。それでも余波は来ましたが、それは受け流します。
私は「『最上級:無属性魔法:重圧(グラビティ)』×10」でウィンドドラゴンを見ずに叩き落とします。浮いてきて飛び上がった体に逆さ落としの『アイアンスピア』
大きく開いていた口の中を狙ってみました。相当効いたようです。
このまま一気に畳みかけましょう。
「『最上級:地属性魔法:メテオストライク』!!」
天を割って表れた火石がドラゴンを完全に押しつぶし、海中に没させます。
………うん、上がって来ませんね。撃破できたと見ていいでしょう。
他の所は―――?
ミシェルのところは、空中での物理戦になっていました。
ドラゴンとミシェルの筋力はほぼ互角のようです。
ですが格闘戦の腕もほぼ互角。お互いに傷を負っています。
私はミシェルに『治癒魔法:回復×10』を飛ばします。
「ありがとうございます!」叫んだミシェルの動きが良くなります。
ドラゴンとの格闘戦に見事に勝利。相手を海に墜落させました。
上がってくる様子はありません。ミシェルの勝利ですね。
ヴェルの所はある意味壮絶な戦いになっていました。
頭に陣取ったヴェルが、延々とドラゴンを殴りつけているのです。
陣取られた場所が悪いドラゴンは、ひたすら頭を振って暴れるのみ。
落ちなければヴェルの勝ち。
ハラハラしましたが、結果はヴェルの勝ちでした。
頭を砕かれたドラゴンは、海に墜落していきました。
上がって来ませんね、ヴェルの勝ちです。
雷鳴は―――私が見た時にはすでに決着していました。
恐ろしくズタズタになって墜落していくドラゴンと、手の先を舐める悪魔的な顔の雷鳴が見えただけです。雷鳴の背の翼は、黒いドラゴンのものに戻っていました。
「集合!神殿に突入します!」
神殿には2間しかありません。まず神託を待つ者が待機する控えの間。
そして星巫女がグロリアのスターマインドの言葉を聞く本殿。
星巫女の世話をする者のための施設もありましたが、それはすでになくなってしまったようです。この後で再建されるのでしょう。
私たちは控えの間で止まります。瘴気が濃すぎるのです。
悪魔―――クラウンはスターマインドを汚染して瘴気に変えているようです。
魔王の残した汚染された星の巫女もいます。
浄化はここから始めないと仕方がないようです。
「雷鳴―――このまま瘴気に増えられると不利です。あなたは先に進んで下さい!」
「了解、星巫女も元に戻してやれよ、じゃあな!」
「ええ、ここで最後です、お互い頑張りましょう!」
~語り手:雷鳴~
奥に進むと、星巫女の座る椅子なのだろう、豪奢な椅子に座る半裸の男がいた。
「なんだぁ、ドラゴンはどうした?まあいい、お前はエヴィルの仇だろう?丁度いい。俺様はなあ、戦いたくてしょうがないんだよ!」
「エヴィルは封印しただけで死んでないぞ?」
「ならお前を殺して封印を解く」
「はぁ?俺を殺しても仕方ないんだが………まあいい、お前、堕天したての奴がよくなる万能感満載状態がまだ抜けてないな?しかも戦魔としての本能も制御できてない。雑魚だよ雑魚。死にたいならかかって来な」
「雑魚だと………フザケルナァ!!」
クラウンは突進してきた。闘牛士のように避ける俺。
奴が壁にぶつかって穴をあけている間に俺は『教え:剛力10』『教え:頑健10』『教え:瞬足10』をかけ、『邪眼:未来予測』を発動。
奴が再び突進してきたが、いつの間にか持っていた武器の槍を『未来予測』で避けつつ片手で受け止める。そしてもう片方の手で貫手を作り、心臓に打ち込んだ。
「カッ………」吐血するクラウン。
その隙に首に手刀をかました。もろに入り、首の骨に―――折れてないな、ヒビでも入ったかもしれないが、それなりにはこいつも丈夫だったようである。
その後は、槍と長剣でのぶつかり合いがしばし。けど―――
「飽きた。飽きたぞお前」
俺はそう言って両手の爪をシュッと伸ばし『特殊能力:キリサキ』を纏わせる。
魔界の友人が使っていた能力だ。どんなものでも切り裂く能力。
ついでに『特殊能力:覇王のオーラ』を発動。威圧する。
それと同時に『キリサキ』の爪で、槍をみじん切りにした。
「どうだよ、圧倒的な強者に殺される気分は?」
そう言って、クラウンに迫る。逃げようとするクラウン。
だが何か隠しているかもしれないので、俺は手は緩めない。
油断はない。逃がさないのだ。
俺はクラウンの全身をバラバラに切り裂いて、残骸をあたりにぶちまけた。
よし、瘴気の噴出は止まったな。
確認にはいけないが(俺が浄化される)向こうも仕事を果たしているようである。
魔王の瘴気は随分とおさまっているようだ。
♦♦♦
待つ事しばし。完全に浄化が終わったようだ―――。
本殿にフリウ達が入って来る。
それと同時に―――。
天使や悪魔が自分の世界に帰る為の「帰還陣」という魔法陣が本殿に展開された。
惑星グロリアの「ありがとうございました」というメッセージも聞こえる。
フリウ曰く俺たちの事は、外の協力者達には元に戻った星巫女が伝えておいてくれるという。まあ事情は把握してるはずだから納得してくれるだろう。
「先に帰るといい。俺は最後に帰る」
「この先、任務中に見かけたら、話ぐらいには来てくれよ」
「ああ、おしゃべりに行かせてもらうさ」
「………達者でな」
「ああ」とこぶしをぶつける俺とヴェル。
「必ずまた会いましょうね」
「ああ、いつか必ず」
天使たちは帰還陣から帰っていった。
俺も後に続く―――
あっさりしているようだが、これが俺たちのエンディングだった。
俺も含めてみな、いつもの任務に戻ったようだ。
寂しいがまあいい―――色々記念品もある事だし?
俺も普段の暮らしに戻っていった
Fin
白と黒が星の危機、救います フランチェスカ @francesca
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます