頭の中に地獄はある。悪夢の世界という逃げ場のなさ！

「拷問され凄まじい苦痛のもと死ぬ」というストレートな猟奇系ホラー。しかし本作における恐怖の真骨頂は、夢と現実を行き来する「逃げ場のなさ」でしょう。

　私はホラーアドベンチャーゲームの金字塔『零』シリーズが好きで、中でも第二作『刺青ノ聲』が大好きです。
　刺青～もまた、幽霊が徘徊する廃墟・眠りの家という悪夢の世界と現実を行き来するストーリーですが、ゲームだと夢側のステージがメインで、「たまに現実に帰って休める（※現実にも徐々に心霊現象が起きる）」ぐらいの印象でした。

　しかし本作は、「捕まったら恐ろしい目に遭う」ことがハッキリしており、次々と犠牲者が出ます。見ている間は必死で頭を使って逃げ回ったり、他の犠牲者の姿に精神をすり減らしたりする一方、目を覚ましても休息しようにも、眠ればまた悪夢に戻ってしまう。まったくもって心が安まる時がない。この閉塞感が最高です。

　実は私も「悪夢と現実を行き来する」ホラーを書こうと考えていた矢先だったので、本作の夢に囚われた主人公たちの追い詰められる様が非常に面白かったです。
　終盤が大慌てて畳まれてしまったことは残念ですが、楽しませていただきました。