おしまい、おしまい
目を開けると、そこには知らない天井が広がっていて、何人もの人が俺の顔を覗き込んでいた。その人たちは俺が目を覚ましたことを知るや否や大騒ぎで、あちこちへ駆けて行ったり、泣き崩れたりしている。
あぁ、そうか。俺はあのとき川に落ちて。きっとこの人たちの様子を見るに、もしや生死の境を彷徨っていたのだろうか。
だけど、この人たちは一体誰なのだろう。どうにも記憶があやふやで、思い出せない。それに何か、俺は今まで何か、長い夢でも見ていたような……。
ぼんやりする頭で天井を見上げて思案していると、ふと手の中に何かを握っているようだ。重たい腕をどうにか顔の方まで手繰り寄せてみると、手に握っていたのは胡瓜だということが分かった。
なんだこれ。俺はどうして、胡瓜なんて……。
そう思いながらマジマジと観察していると、表面に何か文字のようなものが書いてあることに気付く。
目がぼんやりとしているせいか、最初は何が書いてあるのかは分からなかったが、目を凝らして見ると、そこには――。
“忘れたもん、返してほしけりゃ取り返しにこい”。
そう書かれていた。
幽世おにごっこ 黒ーん @kulone
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