押し寄せる罵倒と暴力性の心地よさ

 とある田舎の中学の教室で起こった、白昼の乱闘事件のお話。
 と、そう要約してしまうと本編のいいところを全部取りこぼしちゃう、そんな気がするくらいには強烈な現代もののドラマです。

 いやもう、本当にすごかったです……。
 文体の異様なカロリーの高さが凄まじい。
 猥雑で苛烈で勢いがあって、何か言いようのない熱のようなものを持った文章。
 読んでいてこう、ほんのり具合悪くなっちゃうようなところがとても気持ちいいです。文に中(あた)る感覚。

 描かれている内容そのものに関しては、もうここで語るのがもったいない!
 地獄の底みたいな田舎の、もうどうしようもない子供の人間関係。
 その詰み具合と淀みっぷりを描いているのですけれど、そこに炸裂した暴力のもたらす結果がもう……。
 カタルシスのようなものは確かにありながら、でも根本的には全然スッとしない、結局は何からも逃れられていないところがとても好きです。

 単純な、娯楽作品的な〝都合の良さ〟みたいなもののない感じ。
 読んでいて得てしまったカタルシスも、結局は「散々腐されたあれやこれやに(主人公ではなく、読んでいる自分が)迎合した結果」とも取れてしまうこの感覚。素敵……。

 冒頭の二行目と、タイトルの意味、そして「10」の使われ方が好きです。
 いろいろビリビリきました。とにかく苛烈。刺激の強さがたまらない物語でした。