第3話 それは伝説へ?

 火の神が祀られている大陸。赤毛を逆立てている少年が最大国家のギリシャ風の神殿に来ていた。噂を聞いて、駆けつけてきたのだ。それは両手持ちの剣であること。それは邪悪なものを寄せ付けない聖なる剣であること。それは炎の加護があること。


「ねえ。本当に抜くことが出来るの?」


 不安そうに魔法の杖を持つ少女が少年を見つめる。そう。もうひとつあった。噂の剣は抜くことが出来ない。力持ちの男でも出来なかったことなのだ。


「やってみないと分からないだろ? あ。すいません!」


 少年は眼鏡をかけている左肩を露出した白い服を着た神官に元気よく話しかける。神官はにこやかに対応する。


「ああ。なんだい。坊やたち」


「噂に聞く炎の剣のとこまで行ってもいい?」


「……抜く気かね?」


 神官の問いに少年が力強く答える。


「ああ!」


「案内はするけど……力のある大人でさえ出来なかったんだぞ。見るだけ見て帰りなさい」


 神官は案内をする。奥にある入り口から入っていく。炎の剣と呼ばれるものが低い台に付き刺していた。少年はそれに近づく。何となくこれが初めてではない。身近にあったものだという認識もない。だからこそ少年は確信する。俺ならこの剣を抜くことが出来ると。


「ああ。やっとしっくりくるのと出会えた気がするぜ」


 笑って両手で柄を持ち、そっと剣を抜いた。この光景を目の当たりにした神官も少女も驚きを隠せない。信じられないことが起きた。彼なら邪神を打ち倒せるかもしれない。そういった思いはやがて火の大陸に伝わり、世界中に知られるまでかからないだろう。

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すぐに終わる異世界のおつかい! いちのさつき @satuki1

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