今もずっと願っているよ、温かい森の闇の中で。

純文学っぽさがある。
ファンタジーを比喩に使い、内面を幻想的に表現した作品。
本作は、作者自身の気持ちを書いているのかもしれない。

「卑しい木の根に殺され、卑しい木の根に生かされていたのだった」
この卑しい木の根とは、家族か学校、青春時代なのかそれとも社会かしらん。

幸いにして、主人公は小説家を夢見て旅に出ている。
主人公はなにもかも失ったかもしれない。
でも、森の闇を愛し、森の闇を言葉に表せたらいいのにと口にし、囚われてよかったのかもしれないとさえ言っている。
「堕ちていくような気がした」と気がするだけで、堕ちているわけではない。
そもそも、『小説を書きたいなんてそんな大層なこと思ってしまったのだろう』と思っているだけで、小説家を諦めたとは一言も書いてない。
つまり、まだ諦めていないのだ。

旅人が表そうとした『森の闇』の話こそ、本作かもしれない。