エスケープ・フロム・ジャイアント
新巻へもん
超危険な任務
親友は帰ってこなかった。
俺たちは長い間、あの巨人たちと熾烈な抗争を続けている。やつらはでかい。成体となると俺の60倍以上の大きさだった。
だが、やつらは俺たちを忌み嫌うくせに直接手を下すことはあまりない。もちろん個体差はあって物理攻撃を仕掛けてくるものもいる。
やつらの巨大な城は頑丈だった。しかし、間抜けなやつらは気づいていない小さな隙間や下水から侵入することは難しくない。
危険な場所だが、やつらの城には俺たちの手元にはない数々の食料品があった。
自然の恵みだけを摂取していくことはできるのだろう。ただ、やつらは強欲で必要以上に食料品を貯め込んでいる。
昼間は危険なので俺は夜間に忍び込んだ。夜は俺の友達だ。
奴らの城の長い廊下を走り抜ける。
俺は足の速さが自慢だった。
壁沿いを風のように走り抜ける。
やつらの食料を保管しているエリアにたどり着いた。ふう。第一段階終了。
そこで魅惑的な匂いが俺を誘った。
く。なんという極上の香り。罠だという警告を感じつつも、抗いきれずそちらに向かってしまう。
しかし、俺はそこで立ち止まった。
目の前にはトラップにかかり死を遂げた親友の姿がある。日数が経ったせいか干からびた悲惨な状態だったが見違えることはなかった。
俺は親友の死を悼む。さらば友よ。
……。
気を緩めるべきではなかったのだろう。
パチっという音と共に昼間のような明かりが溢れた。
まずい。夜間は活動を休止しているはずの巨人がなぜか起きだしてきたようだ。
そいつは物凄い音響を放つ。
まずい。ここは一旦撤退だ。
走り始めた俺の行く先に足音をたてて、もう一体の巨人が現れた。俺は慌てて引き返す。
最初の巨人が何かを叫んでいた。
新たにやってきた巨人は勢いよく棍棒を振り下ろしてくる。
バシン。しなる棍棒と地面の僅かな隙間を疾走した。体をできるだけ低くして駆け抜ける。
二度、三度と打ち下ろされてくる棍棒を目と鼻の先でかわした。背中に風圧を感じる。
一難去ってまた一難。
最初に現れた巨人が手に武器を持って先に立ちふさがった。
ビチャ。液体の化学兵器をやたらと床にぶちまける。
滅茶苦茶に発射しているが、俺はツキに見放されたのか、跳ねた液体の一部が脚にかかった。
危ない。この液体を大量に浴びてしまうと俺たちは呼吸ができなくなって動けなくなってしまうのだ。
そうなったが最後、やつらは俺を粘着テープで捕獲し廃棄する。
俺はまだ死ぬわけにはいかねえ。
壁をかけのぼりジャンプをする。
化学兵器を持った巨人はどこかへ去った。
まだ諦めたとは思えない。今のうちに脱出せねば。
入れ替わりにまた別の巨人による棍棒での攻撃が再開された。
俺は急速度で走り、急停止する。ジグザグに走って攻撃者を惑わせた。
しめた。侵入経路への道が開かれている。
猛然とダッシュする俺の目の前に一度居なくなった巨人がまた立ちふさがった。両手に構えているのは、神経ガスの発射装置。
ついにやつらも本気になったようだ。神経ガスはやつらの体にも有毒だ。それにも関わらず使用しようというのだから強い殺意を感じる。
発射装置の銃口が俺に向けられた。
チャンスは一度。
俺は羽を出して飛んだ。
***
「きゃー。〇〇〇〇が飛んだ~」
エスケープ・フロム・ジャイアント 新巻へもん @shakesama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます