会いたかった人達

※1-18時点の感想です。

 総じて言うと、万人受けする作風ではありませんが、好きな人はとても好きだと思います。私はその一人です。 

 まず何より、言葉の遣い方が綺麗です。とっても。
 ネットのファンタジー小説(特に戦闘中心の)ですと、文章の字面自体よりも内容が先に頭に入ってくる、というようなテンポの良さ・読みやすさが特徴だと思いますが、一方で個々の言葉遣い自体は二の次になります。今作はそれとは対極と言った感じです。魔法の複雑な描写などもありますが、ちりばめられた抒情表現との文量のバランスも良く、(きちんと読み取るつもりで読めば)読みにくく無いと思います。

 それから、キャラクター達も魅力的です。特に主人公とその顧問は、「私が会いたかった人達だ」と感じました。奇異な精神構造の持ち主が多いですが、属性としての「狂人/強者」キャラではなく、「どこかで知ってはいたけれど会ったことは無かった」ようなリアリティを感じました。皮肉が多い掛け合いには「ああラノベらしい」と思わせるような愉快さもありつつ、一方で退廃的な雰囲気も強い。癖になります。

 ただ、ストーリーに関して言うと、序盤は「人物の意図や状況がわかりにくく、主人公が困惑する展開」がかなり連続するので、ストレスを感じる方もいるかもしれません。ですがキャラクターたちの行動はちゃんと筋が通っており、私としてはあまり違和感はありませんでした。曰く、プロットを書いておられない、ということですが、間延びした部分などなく、毎話に意味があるのはすごいと思います。