第11話 僕はしおんと冒険する🌟
大斧が、
僕は切り飛ばされて、近くの岩に叩きつけられた。ダメージは18点。一気に、体力の半分を持っていかれた。
まさか。これ程の策を練り、全力を尽くしても倒せないなんて!
「その時です。ピンサローはプラチナの腕を掴み、肩に担ぎあげました。再び、プラチナが
淡々と、しおんは
「『ライト。もう無理だよ。こうなったら奥の手を使おう』と、ヌルヌルが言います」
「でも、それだとプラチナが!」
「『私には……ライトの方が大事なんだから!』」
ヌルヌルは叫び、「
「や、やめるんだヌルヌル!」
「『ライト君、ゴメンね……』そう呟いて、ヌルヌルは導火線に火を点けました」
そう。
爆炎が、橋を包み込む!
一瞬で、橋が崩落する。
僕は、勝てなかった。
「くそおっ!」
僕は思わず、テーブルを叩いた。その激しさに、しおんが驚いて固まってしまう。
「……ごめんなさい」
ポツリと、しおんが言う。
「ううん。しおんのせいじゃないよ。僕が甘かったんだ」
「違う。私のせいなの」
「え……どういう事? しおんも頑張ったじゃないか」
「そうじゃない。そうじゃないの! 私は、
しおんの目に、薄く涙が滲む。
「どうして? どうしてそんな事を?」
「だって、
ぶちまけて、しおんは泣き出してしまった。
僕はしおんの言葉を聞いて、やっと、彼女の不可解な行動の理由に気が付いた。これまで、しおんが僕から逃げ回ったのも、ゲームを避けようとしたのも、僕とのゲームを終わらせたくなかったからなのか。
そう考えたら、僕も、胸に強い気持ちが込み上げて来る。
僕はしおんに手を伸ばし、そっと頭を撫でる。
「違うよしおん。それは逆だよ」
「……え?」
「僕が一区切りつくと言ったのは、ゲームを卒業するって事じゃない。そうじゃなくて、ピンサローに勝ったら、しおんに告白するつもりだったんだよね」
「え? それじゃ……その」
「僕はしおんが好きだ」
「あ、え、あ…………本当に?」
「本当に。でも、告白はお預けだね。ピンサローに勝てなかったから。また、次の機会に改めて言うことにするよ」
僕は言い終える。しおんは顔を真っ赤にして固まっていた。眼が、
面白いので、僕は上体を動かして、しおんの顔を覗き込んでみる。すると、しおんは余計に焦って顔を背けてしまう。
「もう。そんなに見ないで。恥ずかしい……でしょ」
「ごめん、ごめん」
ポコりと、しおんが僕の胸を叩く。その手は、続けてポカポカと、僕の胸に当たる。
「馬鹿。馬鹿、馬鹿……」
「ごめん」
「私、本当は淋しかったんだから」
「うんうん。悪かったよ」
「凄く凄く、淋しかったんだから。もう、彦星君と遊べないって、悲しかったんだよ?」
「うん。もう大丈夫だよ。僕は何処にも行かないから」
と、指先でしおんの涙を拭う。
「こ、告白……してくれる筈だったなんて」
「うん。いずれまた、ピンサローに挑戦しよう。勝ったら、その時は今度こそ!」
僕の視線に、しおんはモジモジしながら顔を背けかける、が、次の瞬間、ピコリと、しおんの顔に閃きが浮かぶ。
「そ、その時です。突然、何者かが崖を這いあがって来ました。ピンサローです。ピンサローの鎧は砕け、体中、怪我と骨折だらけで瀕死です。ヒットポイントは1点です。倒すなら今です!」
ふいに、しおんが言う。僕は思わず吹き出しそうになる。
「駄目だよ、しおん。DMの権限を私利私欲で使うのはナシだ。大丈夫。僕は何処にも行かないから。また、一緒にピンサローを倒そう」
「う……うん。ごめんね。じゃあ、ピンサローをやっつけたら」
「もう一度君に言うよ。好きだって」
「うん。約束……だよ?」
こうして、僕等は指切りを交わした。
⚅⚅⚅
それからも、二人の冒険は続いた。
僕としおんは異世界の大海を渡り、山河を行き、釣りや魔法の祝祭を楽しんだ。たまに魔物と戦って、魔法の装備を手に入れたりもする。しおんは、ゲームでは相変わらず男の娘になりきって僕をドギマギさせる。けど、それにもだいぶ慣れてきた。
時には休み時間の教室、時には僕の自宅の部屋、そしてしおんの部屋。それは、僕等にとって異世界への入り口だ。この公園のテーブルも、相変わらず、僕としおんのお気に入りの場所だ。少しぐらい殺風景でも構わない。
だって、僕等には魔法があるのだから。
すうっと、しおんが息を吸う。
「想像して。ここは10月の公園ではない。辺りは静かな森林で、心地よい木漏れ日が降り注いでいる。何処からかパンを焼く匂いがして、
しおんは今日も、僕に柔らかな魔法をかけた。
おしまい。
放課後、僕はしおんと幻想世界の旅をする 真田宗治 @bokusatukun
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