恋愛小説と思って読むなかれ

読み終えてしばらく放心してしまいました。そうか、そうきたか。ご都合主義に堕ちてしまわない、とても現実的で、とても誠実な物語なのだなあと。

そう思いつつも、飲み込みきれない何かが残り、それは若葉さんに対する嫉妬のようなものかもしれないと気づきました。

過去の重いトラウマを断ち切り、本来の(と言い切るのは抵抗があるのですが)自分を取り戻すや、それまで抑圧されていた能力や可能性が堰をきったかのようにあふれ出し、ぐんぐんと光に向かって広がっていく。貪欲なまでに人生を力強く生きた彼女を直視するのは爽快でありつつ、辛くもあります。

彼女を縛り付けていたトラウマとともに、彼女が変わる契機となった恋愛が丹念に綴られますが、それでも、本作において恋愛はきっかけという位置づけを逸していません。

運命とはあとづけされるものなのでしょう。そんな甘っちょろいものはこの世には存在しなくって、後から振り返って、実はあれが……としみじみ思ったとき、それが運命になるのでしょう。いみじみとそんなことまで考えさせられる物語でした。