あの時の手の中のガラス玉から見えたものは夕焼けみたいな優しい色した日々

二人の主人公視点で描くことで、物語に深みが生まれている。
ラムネは、炭酸が抜けると砂糖水となり、練り上げて水飴となる。
寧々の恋は、中学三年の夏から最後までずっと、変質しながら続いていくのだ。

水飴は最後まで甘い。
でも現実は、最後は苦い。
子供が甘いものを欲しがり、大人になると苦いものを口にするのは、人生の機微を知るからだと聞いたこともある。
そんなことを思い出させてくれるような、寧々の心情が書かれている。

喫茶店『Cafe・Bouteille en verre』の店名を見てモヤッとしていた。
なぜこんな店名なのかしらん。
その意味が最後に明かされる。
喫茶店はガラス瓶なのだ。
寧々にとって、美久はラムネ瓶に入っているガラス玉だった。
それをうまく現していた。

本作には番外編『ミルクティーキャンディ』がある。
この先はきっと、ふたりは友達として長く付き合っていけるのかもしれない。
「あの頃はね」
と寧々は美久に、自分の気持ちに正直に打ち明けることもできるだろう。