異形の者の哀しさを伝えるダークファンタジー

伝奇・伝承のたぐいは暗く恐ろしいイメージだが、この物語には人間の強さやたくましさ、そしてかつて人間だったかもしれない、異形の者の哀しさが描かれている。
中学生の主人公は、弟をおぶって川沿いの土手を歩いていたとき、何かに足を掴まれる。その異形の者の姿が不気味で妙にリアルだ。

弟を攫われた姉に祖父母たちが、昔、口減らしのために殺された赤ん坊の話をする。もしかするとあれは死霊なのか?

筆者の書く伝奇には、書物による裏付けがあるので、安心して読むことができる。導入部分からすぐに不思議な世界に没入できるのも筆力の高さゆえだろう。

日常生活に疲弊している人たちに、ぜひ読んでいただきたい。
必ずあなたを遠いところまで連れ出してくれるはずだ。

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