第10話 ぐにゅ、スポーン!

「ねぇ行信、あなたこんなことできる?」

「俺にできねぇことなんかねーよ。なにをしろっていうんだ?」


柿恵は計画を話す。メガバンクに勤めている柿恵の口座に、その銀行に預金をしている人たちから一円づつ移して、およそ5千万円抜き取るというものだ。もちろん痕跡を残さずに。


「ちょれー、ちょれーよ」


行信はそう答えると、パソコンに向かいなにやらプログラミングを始めた。


少しずつ、少しずつ抜いていき、5千万円があっという間に柿恵の口座に入ってきた。


柿恵と行信は狂喜乱舞した。二人は高級レストランで祝杯をあげた。




しかしほころびは出るものだ。そのメガバンクが発行している電子家計簿のアプリを使っているユーザーが、どう計算機を使っても一円が足りないのに気づいてしまった。


ちょっとした呟きから、「うちも!」「うちも!」「私も!」と炎が燃え広がるがごとくSNSで拡散し始め、警察が動く事態になってしまった。


警察と被害者がそのメガバンクのビルを取り囲む。


中では行員が戦々恐々としている。柿恵はやおらバックヤードの余暇室にいき、卓球玉がいっぱいに入っているかごを引きずってきた。


警官が入ってきた。続いて被害者も。


柿恵は台の上に立ち、やおらパンティーを脱ぎ捨てると、海老ぞりになりながら両足を思いきり御開帳し「ぐにゅっ」とあそこにピンポン玉を突っ込むと、「スポーン!」と群衆に向かって発射する。


「キャー!」


おばさんに当たると、おばさんは気絶した。


「やめなさい、やめなさい。レディがそんなことをしちゃいかん!」


そう言いながら近づいてきた警官の顔めがけてぐにゅ、スポーン!


3つ突っ込みスポーン!スポーン!スポーン!


あたりはパニックになった。


やっとのことで警察に取り押さえられた柿恵。抵抗することもなく、素直に連行されていった。




取り調べがはじまった。柿恵はかくし球を持っていた。それを警官の顔めがけて、


ぐにゅ、スポーン!




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ショート・ショート集 村岡真介 @gacelous

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