目に見えるものだけが世界のすべてじゃないよ

ダークなメルフェンである。

「けれど逆に、冷たいものが熱を帯びた姿は嫌いなのだと、この道を歩いて分かる」と、主人公の性格が書かれている。
彼と一緒に眺めていた海岸を埋め立てた土地に立てられた遊園地も、主人公にとっては嫌なものだったに違いない。

彼が変わったのは、おそらく主人公が上京したからだと思われる。
一緒に悲しんでくれる人がいなくなったのだ。
彼女は「冷たいものが熱を帯びた姿は嫌い」と思っておきながら、日本で一番熱を帯びている東京へ出ていった。
先に裏切ったのは、主人公の彼女。
だから彼は一人で悲しむしかなくなり、他の人と同じように幸せを演じる選択をしたのだろう。

世界のことわざの中で、愚か者や怠け者の象徴としてよく登場するロバ。
遊園地に行ってロバになるのは、劣って無価値な存在になることを意味しているのかもしれない。

幸せは偶然の産物である。
偶然に頼る生き方は、自分の人生を生きていない。
つまり無価値。
その姿が、ロバなのだろう。