河原で拾った記憶喪失の美青年は一体何者? お狐さまが導くめぐり合いの縁

文句のつけようもないほど面白かったです!

とある藩主の城で、後継ぎを巡って起きたお家騒動に端を発した物語です。
狙われた姫を守って、川に落ちたきり姿を消した従者。
城の者がかの従者の行方を追う一方。山に暮らす少女・狐杜は、河原で記憶喪失の美青年を拾います。
自らも赤子の時にお狐さまの杜で拾われた狐杜は、青年に月守と名を与え、一緒に暮らし始めますが——

見どころを挙げ始めるときりがないのですが、まず、文章そのもののリーダビリティが凄まじく高いです。
現代とは違う文化や言葉遣いもあるのに、驚くほど読みやすく、あっという間に物語の世界へと引き込まれます。

登場人物も、みんな魅力的。
狐杜や月守はもちろん、脇を固める与平や八重、敵方にあたる十郎太や勝孝に至るまで。
それぞれの関係性を描き出す筆致が本当に見事で、深い人間模様に胸を打たれました。

『家族』の縁。それが良い時も、悪い時もある。
何を信じ、何を目指すのか。
誰の視線を受け、そこに何を見出すのか。
親子関係が生むのは、軋轢か生きづらさか、あるいは燦然と輝く道標か。
普遍的なテーマは、現代を生きる我々の心に響くことでしょう。

見事な大団円でした。読後の満足感がすごい。
素晴らしい物語です。多くの人に読まれますように!

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