思い出となったものはずっと色褪せず美しいまま

 妻と娘に囲まれ、幸せな家庭に生活する男性が、若い頃の思い出を振り返るお話。

 家族ものの現代ドラマ、かと思いきや全然そんなことはなく、ドロドロで病み病みのお話です。

 大学時代、とても親しかった友人との思い出の物語。
 それだけならただの素敵な話で済んだのでしょうけれど、問題はその思いが深く重すぎること。
 彼について語るときの調子に対し、それを比較して今現在の家族を見てしまう、その仕草というか振る舞いというかがもう本当にすごい。
 思考のありようから滲み出る病み具合。ゾワゾワ来ます。

 お話として見る分には楽しいんですけど、でも「もし自分が彼の家族の立場だったら」と想像してみたときの、この「たまったものじゃない」感がとても素敵。

 やり場のない思いを抱え込み続けることの、何か怖さのようなものを感じさせてくれるお話でした。