第6話 枝分かれ

 長い長い階段に、どこか懐かしさを覚えるような提灯の灯りが暗闇を照らしている。階段の1番上にいる大きな影がこちらを見下ろしている。私はその影に向かって手を伸ばしてなにかを叫んだが、視界に入った手は人間のではなくキツネの手だった。


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 お腹に乗る体重と鈴の音で目が覚めた。

『おい、おきろりんご!大変だ!』

「ん・・・。え、リンネ?!どうして家に・・・」

『そんなことより大変なんだ!キュウビが・・・、キュウビがいなくなっちまった・・・!』

「え?!」

リンネと急いで蔵に行くも、既にそこにキュウビの姿はなかった。

『昨日の夜、キュウビが縁側にいてそこから一緒に寝床に入ったとこまでは覚えてるんだ・・・。今ひびやとココネが山の方を探してる。俺達も合流しよう。』

私はここでふと、今日みた夢を思い出した。

「そういえば、私今日不思議な夢を見たの。長い階段を提灯の列が照らしてて、上に誰かがいて必死に呼ぶけど声が届いてない感じがして・・・。」

『長い階段・・・?ここの神社の階段じゃなくてか?』

「ここではない気がする・・・でもどこか見覚えがあるような・・・。」

『それって、もしかしてりんごの学校の裏にある、長い階段のことじゃない?』

「そこなら僕も知ってるよ。行ってみる価値はあるかも。」

山からココネちゃんと九重君が降りてきた。どうやら校舎の裏山にはとても古いお寺があるらしい。昔キュウビはそのお寺で生まれ、お稲荷様として祀られていたのではないか、そして何らかの出来事があって《はぐれ者》になってしまったのではないか、というのが私達の推測だ。

「じゃあ、そのお寺に行ったら何かわかるかもも。行ってみよう。」

『俺はりんごについて行く。ひびやとココネは学校の方に向かってくれ。この前の新聞記事に載ってたことがまた起ころうとしてるなら、いつ誰が連れ去られてもおかしくない。ココネ、ひびやと学校の人を守ってくれ。』

『わかった。リンネも、気をつけてね。』

「じゃあ僕らは学校に向かう。甘宮さん、そっちは頼んだよ。」

そうして私たちは二手に別れてキュウビを探し始めた━━



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 もうすぐ秋がやってくる為か、少々肌寒さが目立つ。そんな薄暗い祠の中は赤と青の2つのロウソクが照らされており、真ん中の台座に置かれた水晶玉には《甘宮りんご》という甘宮家の末裔が映し出されている。

『・・・ふーん。ボクらを探しに、ねぇ。君も優しいお友達が出来たじゃないか。やっぱりボクなんかが居なくても、キミは生きていける。なのになんでまた、こんなとこに来ちまったのかねぇ・・・。ここに来ても、もう前のボクは居ないのに。』

そう言ってボクは、手足を固定されたキュウビに語りかけた。

『アタクシは・・・あなたともう一度、あの時みたいに笑い合いたい。そう思ったただけです。今からならまだ間に合います。[神隠し]で攫った子供達を解放しなさい。』

『今更解放したって、もう事件は何十年も前だ。今子供達が出てきたら世間に混乱を招きかねない。それをキミはどう対処するつもりだ?それにボクはもう長くない。もってもあと3日というとこだな。それまでにあの子達はボクらを見つけられるかなぁ?それに、ボクはあと最低2人は必要としている。最悪キミの言うひびやという男と甘宮家の末裔を生贄に捧げたっていい。この尾を1本、減らすためなら。』

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りんごの木から ひくらみ @hikurami

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