見た目は令嬢、中身はアラサー、ほんでもって王子様は、我が愛犬?

気づけば豪華絢爛な王宮の舞踏会。ロンドが彩る旋律的躍動感。華やかなドレスに身を包み、侯爵令嬢としての転生に混乱覚めやらぬ中、王太子から告げられる辛辣な言葉でこの物語は幕を開ける。主人公の茉依こと令嬢マイラ・カレンベルクは傷心するや否や、すぐに茉依を助ける第二王子フレーデリック。そして、その落差を埋めるかのような間髪入れずのザマァ炸裂。これが何とも会心の爽快感を放ち、目まぐるしい展開の中でもしっかりとその役割と章立てがなされており、その先を、その行く末を読みたいと惹きつけてやまない。
王道の異世界転生、と思いきや、まさか自分と愛犬のW転生? 予想を超えるストーリーと人物相関。うっとりする程の美しさで紡がれる背景・情景描写に、固有の脱力言葉と体幹力のない壊滅的ダンスが地味に入り混じるコミカルな持ち味。これらが織り成す絶妙なバランス感覚は、ありふれた異世界転生悪役令嬢シリーズの中でも抜群の安定感を保持し、多くの支持者を得ていると言っても過言ではない。作者様でしか出せない繊細でダイナミックな感性が生み出す優美かつユーモアあふれる世界観を、是非ご堪能ください。

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