コロニアル・ハロ

　浅くはばの広い川が南へ流れている。川の西には広い平野が広がっている。農地を挟んで一キロメートルほど離れたところに背の低い建物がちぢこまって集まっている。川の東に映画館がある。映画館はつやのない白い立方体の建物だ。映画館のさらに後方に山脈がある。川には映画に映るものならなんでも流れてくる。映画館ではたらく天使たちは十代後半から二十代はじめのひとのように見えるが、生命ではない。そのため天使たちはみずから自壊をえらばないかぎりいつまでもこの世界に残る。この世界を統括する神話的存在は先生とよばれている。
　映画館ではたらく技天使（ギテンシ）のナナはひとのありかたを理解しようとして掟を破り映画を見てしまう。ナナは共犯者の技天使タタ、そして世界のありかたをあきらかにしようとする遣天使（ケンテンシ）カカ…続きを読む