第16話 ギダノの最期

【アースライ】


『オーナー、ギダノ元会長はこのファーミーティアから8光年、居住可能惑星の無い無人の恒星系の第6惑星付近にいるそうです』


「ありがとう、スターク艦長」


『いえ、中型戦闘艦の乗員に前職の知り合いがいましたので、親切に教えて下さいました。超巨大戦闘艦1隻で中継器マイスの横流し品を使って通信を繋いでいるそうです』


「ちょっと待って・・・中継器マイスって、もう横流しされてるの? 」


『かなりの高額で取引されてるようです』


「情報ありがとう、ギダノ重工のドーラス・カイネン会長に聞いたら、ギダノ元会長って、今は行方不明扱いになってるらしい。ちょっと行って来るね」


『はい、他にも色々教えて下さいましたので、その情報もまとめて送ります。お気を付けて行ってらっしゃいませ』







某恒星系の第6惑星付近付近

超巨大戦闘艦ガルチノアス戦闘指揮指令室


【チルキダ・ギダノ】


「あいつらからの報告はまだか?」


「会長、まだありません」


「せっかく中継器マイスを横流しまでさせて繋いだのだ、まったく、相場の5倍だと・・・ふっかけおって」


「会長!!」


「おお、やっと来たか?」


「いえ、このガルチノアスの周囲に多数の艦船が転移してきました。機動衛星、超巨大戦闘艦、超大型艦、中型戦闘艦によって囲まれています。

連邦の騎士アースライを名乗る超巨大戦闘艦から通信が入っています」


「なぜ、この場所が・・・あいつら裏切ったのか?」





モニターにあの茶色い髪の若造が映る、なぜか腰に黒い服の子供が抱き着いている。

戦えばこちらに勝ち目が無いのが分かっていての余裕なのか、あいかわらず緊張感の無い腑抜けた顔をしているな。


『見覚えのある戦闘艦ですね。チルキダ・ギダノ元会長、会うのは2度目になります。前回はやっとお会いできたのに、他人のフリをするなんて人が悪いですね』


「こっ・・・この若造が・・・」


『対艦攻撃衛星4基で待ち伏せて、僕を殺そうとしたそうですね?』


「あれで確実に殺せると思ったのに残念だ」


『そして、今度はファーミーティア行きのウェディカを狙った』


「弱点を狙うのは当然だろう?」


『僕はやられた事はキッチリとやり返します。その戦闘艦の乗員は全て

そこの元会長と一緒に消滅させますが・・・いいですね?』


その言葉で戦闘指揮指令室の中に緊張感が走る

こっちも、この状態で戦って勝てるとは思っておらん、しかし・・・


「そうはいかん、もしこちらを攻撃すれば、その映像が加工されてばら撒かれるようになっている。お前の売りつけた中継器マイスを通じてな」


高くついたが、これで迂闊に攻撃はできまい。


『えっ? ・・・・・・・ へー、そうなんですか?』


「せっかくの連邦の騎士の名に傷がつくぞ。それでも良ければやるがいい」


『クリムティア、次元破砕砲ディメンジョン・デストロイヤー準備、向こうは消滅させてほしいみたいだ』


「なっ、脅しだと思っているのか?」


『いえ、そもそも今更、僕のニュースのネタが1つや2つ増えても別に気になりません。それよりも、あまりにも間抜けな話を聞いて吹き出しそうになりました』


「なんだと・・・」


中継器マイスの事です、まさかこちらの技術テクノロジーを信用して脅すなんてバカですか。笑わせてくれたお礼に、その宇宙船ごとキレイに消し飛ばしてあげますよ、クリムティア』


「みんな・・・ギダノ会長を拘束しろ、会長ここまでです」


戦闘指揮指令室の中でいくつもの銃口が


「こちらガルチノアス、降伏する。攻撃を中止してくれ」


『クリムティア、次元破砕砲ディメンジョン・デストロイヤーの発射は中止だ』


『アースライ、やっと修理が完了して撃つのを楽しみにしてたんだ、手ごろな目標だし撃っちゃダメかな?』


≪クリムティア、止めろ!!≫

メルクが焦った様子でクリムティアを止める・・・珍しいな。


『クリムティアお願い、別の機会に撃たせるから、今回は我慢して』


『仕方ない・・・今回だけだぞ』


「アースライ殿、攻撃を中止してくれた事を感謝する」


『ドーラス・カイネン現会長に、と頼まれていましてね、それだけです』


こうして、会ったことも無かった僕に、深い恨みを抱いて色々とやってくれた

チルキダ・ギダノ元会長を中継器マイスの横流しや隠し資産の情報のオマケを付けてから連邦軍に引き渡して、この件は終わりを迎えた。






クリムティア制御室内


【アースライ】


「みんな、お疲れ様。これで、終わったかな?」


後は連邦軍の到着を待つだけだ・・・


「メルクも中継器マイスが機能停止出来る事を教えてくれてありがとうね」


この近くにある中継器マイスを一時的に機能停止できるなんて知らなかった。


≪その事はいい。それよりアースライ、非常に言い難いのだが・・・≫


「どうしたのメルク?」


≪あのガルチノアスの横に浮いている岩塊、見た事は無いか?≫


確かに大型戦闘艦ガルチノアスの近くに、戦闘艦と同じくらいの大きさの岩塊が浮かんでいる。


形は円盤状・・・あれっ?


「ねえ、メルク・・・あれって、まさか?」


≪おそらく連結恒星炉タリスマンだ、次元破砕砲ディメンジョン・デストロイヤーを撃たなくて助かったな≫


「もし撃ってたら?」


≪中身が空だったら問題無い。中身が矮星1つ位なら、この星系の消滅くらいで済むかもしれないな≫


「運が悪かったら?」


≪あの中に超巨星クラスが1つでも入っていれば、我々は全滅、新しいブラックホールの誕生だ≫


「撃たなくて本当に良かった。さっきのセリフじゃ無いけど。攻撃を中止させてくれた事にコッチが感謝しないといけないね」


≪なあ、アースライ。本当にわかっているのか?≫


「えっと、僕達が無事だった事以外、他に何かあったかな?」


連結恒星炉タリスマンは前線での恒星炉の補給に使われていた、こんなモノが単独で浮いていると思うか?≫


「・・・わかった、この星系に何があるか、手分けして、みんなで探してみよう」


≪ああ、探査の為、各機にメルク子機を送る。私はクリムティアティアとここに残って、連邦軍があいつらを連れて行った後、連結恒星炉タリスマンの偽装を解くとするよ≫


「それじゃあ、僕は・・・」


『マスター、最近イシュメラーナに乗って頂いていないのですが?』


「わかった、イシュメラーナ、ノーチェと一緒に小型宇宙船でそっちに行くよ」


僕に抱き着いたままのノーチェが小さい声で呟いた。

『パパ、ノーチェ、自分で行けるの』


ノーチェが僕から離れて


【装】


目の前にクリサリスを装着したノーチェが現れた。

額と両手の甲と両足の甲に黒い珠が埋め込まれているが、それよりも・・・


「そうだよね、耳はそうなるよね」


クリサリスの頭部に2本の長い耳が生えていた。


ルジェ【装】


僕もクリサリスを纏い、一緒にイシュメラーナに到着した。


「イシュメラーナ、お待たせ。さて恒星系の探索は、どういうふうに分担しようか?」


『私は小回りが利きませんので、この第6惑星軌道よりも外側の探索に向いています。ですので内側をシルキスタとブランシェ、外側を私でいいと思います』


「じゃあ、それで。シルキスタもブランシェもよろしくね」


『シルキスタ、了解。次にマスターが乗るのは私』


『ブランシェ了解。この先、ブライダルシップの仕事が入りますので、その後は私優先でお願いします』






そうして、手分けしてこの星系内を探索した所・・・


『マスター、もちらシルキスタ。アステロイドの中に遺跡文明品らしき物体を確認しました。メルク子機で偽装解除しましたが青い三角推が現れました』


『こちらブランシェ、遺跡文明品を発見しました。こちらも同じ、全長1km程の青い三角推です』


「こちらイシュメラーナ。こっちも見つけた・・・メルク、これ何?」


≪まさかだったのか? すまないが、これと同じモノがもう1基あるはずだ探してくれ≫


「わかった探して見るよ。ところでメルク、もう一度聞くけど、コレ何?」


空間隔絶装置エリア・アイソレーター、最高の防御装置だ≫

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星喰いのメルク 黄昏 暦 @kaku_twilight

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