第15話 花嫁達の危機
『こちらブライダルシップ ウェディカ。
現在、ファクマス星系内で中型戦闘艦3隻による襲撃を受けています』
〖ネウ・ホパリアへの里帰りツアー〗の会議中に突如入った緊急通信は、
ファーミーティア全土の特に独身男性達に衝撃をもたらした。
「「「俺達の花嫁に手を出したのは、どこのどいつだ?」」」
緊急通信は続く・・・
『転移直後のポイントで待ち伏せを受けました。被弾ヶ所多数、
「ルジェ、ごめん。至急ウェディカに通信を繋いで」
《承知しました。繋ぎます》
「スターク艦長、大丈夫?」
『オーナーですか?』
「今、ファーミーティアにいるんだ。すぐに行くから、ちょっとだけ待ってて」
『はい、なんとか時間をかせいでみます』
ブライダルシップ ウェディカ艦内
【サーシャ・スターク】
まさか、オーナーがファーミーティアにいる時に襲ってくるなんて・・・
『こちら、
そういえば、この声・・・どこかで聞いた覚えがありますね。
「こちらブライダルシップ ウェディカ 艦長のサーシャ・スタークです。男性からの高圧的なアプローチは嫌われますよ? 何か用ですか?」
『今すぐ乗客をポッドで放り出せ、出さないと宇宙船ごと破壊する』
「それは、それは無理な相談です。それと、こちらは名乗ったのですが、あなたのお名前は?」
『バカが、
「そうですか? 聞き覚えのある声だったので、てっきりセダック・ターマさんかと思いました」
『なっ・・・てめえ・・・誰だ?』
やっぱりそうでしたか・・・なんてバカな事を・・・
「嫌ですね、私はちゃんと名乗りましたよ。聞いて無かったんですか?」
『おい、セ・・おまえ、長話をするな。そこの宇宙船、攻撃されたく無かったら、早くポッドを出せ』
今度の声もですか・・・
「あら、その声はタンボット・トーミンさんですね。ギダノ重工の仕事を受けていらしたあなたが、どうして
『お前ら2人共、バレてるじゃないか。こうなったらこの宇宙船ごとを沈めるしかない』
いや、仲間がそんな事を言っちゃダメですよ、どうしていつも黙っていられないんですか?
「その声は、カーマ・キーリさんじゃないですか? お久しぶりですね」
『誰が、カーマ・キーリだ、俺はカームだ。俺だけワザとらしく間違えやがって』
こんな誘導尋問にもならない誘導に、引っかかってくれるのは連邦中であなただけですよ。
「そちらこそ忘れたんですか? 以前、私に『好きに呼んでください、もうカーマで良いです』って言ってたじゃないですか? 」
『そんな事を言った覚えはな・・・・・・あれっ?』
『『どうした、カーマ?』』
『・・・つかぬ事をお伺いしますが・・・もしや、安全協会の?』
「やっと思い出して下さったみたいですね。しかし、残念、時間切れです。
オーナー、どうぞ」
次の瞬間、3機の中型戦闘艦は
『こちらシルキスタ。グラベルで3機共移動不能にしました。マスター、ファーミーティア各所から”戦闘艦は3機共、原子一つ残さず破壊してくれ”と通信が入っていますが、破壊してもよろしいですか?』
「オーナー、すみませんが破壊は待っていただいてよろしいですか?」
『スターク艦長、もちろん破壊するつもりはないけど、どうかしたの?』
「いえ、どうやらこの
『あ・・・安全協会の・・・メデューサ』
「・・・聞こえてますよ、カーマさん。後で直接会ってお話ししましょうね?」
被弾したウェディカの応急修理を終えて、惑星ファーミーティアのホッカネ宇宙港に花嫁たちを乗せた
10回目の大歓声の後、
「オーナー、お出迎えありがとうございます。今回はウェディカを壊してしまい申し訳ありませんでした」
「大変でしたね。すぐに出発の予定だったんですか?」
「いえ、あのマーメイドツアーの影響でアクールの受け入れスケジュールが少し遅れています。その為、このファーミーティアで乗員のメディカルチェックと惑星時間で2週間の休暇の予定でした」
「惑星アクールの件で、とうとうウェディカの航行予定にまで影響が出ちゃいましたか」
「マグカ代表とギフカス代表が必死に調節してくれていますが、宇宙港のキャパシティーが足りず、新宇宙港の建設に着手するそうです」
「その件はこちらでも聞ききました。このファーミーティアの4つの宇宙港も限界に近いので、こちらも早急に建設計画を進めないとまずいですね」
「しかしオーナー。この襲撃でウェディカの
僕は今、ここの来ている宇宙船を思い出す。
「スターク艦長、それならウェディカの修理が完了するまで、ブランシェでブライダルツアーをやってみませんか?」
ガターン!
あれっ? 乗員の誰かが、何か落としたのかな?
「オーナー、その申し出はありがたいのですが、
「それなんですが、ウェディカの
僕の近くにブランシュから送られた1基のコクーンが到着した。
「ブランシェもリリノさんの事を気にしてたから、ちょうどいいんじゃ無いかな?」
隠れて逃げようとしていたリリノさんは、いつの間にか両脇に立っていた女性スタッフに捕まえられていた。
リリノさんは、コクーンに、有無を言わさず押し込まれている。
「スターク艦長、みんな、ずいぶん慣れてませんか?」
「リリノさんがメディカルチェックで逃げ出すのは良くある事なので、悲しい事にみんな慣れてしまいました」
「みなさんも、今回は大変な目にあいましたが、ちゃんとメディカルチェックを受けてから休暇を取ってくださいね」
「はい、私も、あの自称
【セダック・ターマ】
今いるのは宇宙港の地下にある施設の中だ、俺達3人共拘束された状態で椅子に座らされている。
「俺達に出来る事は?」「どうせ名前はバレているんだ」「黙秘を通して、裁判所で会長から良い弁護士を付けてもらって、なんとか執行猶予をつけてもらう」
俺達3人の意志は固い、大丈夫だ。
カツーン カツーン カツーン カツーン カツーン カツーン ・・・
「「「あっ!」」」
どうして・・・こんなに靴音が響くんだ?
「アレ・・・が来る」「銀目・・・」
「ここを出してくれ・・・頼む、なんでもする」
いかん、カーマが錯乱しだした・・・
「落ち着けカーマ、冷静になるんだ」「そうだ、今、アレは安全協会の職員じゃない、大丈夫だ」
無情にもドアが開いて、見慣れない制服を着て銀色の眼鏡を付けたあの女、銀目が現れた。
「皆さん、お久しぶりですね。まあ3人一緒にお会いするのは初めてですか。ご存じかと思いますが、私はウエディカの艦長サーシャ・スタークです」
「べ・・・弁護士の同席を希望する。あ・・・あんたは今は安全協会の人間じゃない、なんの権限もないはずだ」
眼鏡の下の口元が少し歪んだ。
「どうしましょう、今、この建物の外では『花嫁達を襲った凶悪犯』を引き渡せと群衆が集まっていて、今にも暴動になりそうなんですが? せっかく保護しましたのに、私、暴動が怖くて引き渡してしまいそうですわ」
「なに・・・?」
「ああ、そうでした。私はもう安全協会の人間では無いのでした。保護の義務があるのはこの惑星の治安部門でしたね」
「も・・・もちろんだ。治安部門に引き渡してくれ」
「はい、治安部門の責任者でしたら、外の群衆の最前列にいらっしゃいましたので、すぐに会えますよ」
「なっ・・・・・」
「なんでも、次のお見合いツアーに参加予定だったのに、この件でツアーの日程がズレて参加出来なくなったそうです。憎しみの
「・・・助けて」
「ごめんなさい、私はもう安全協会は退職しましたので・・・・・
何の権限も無いんです」
「お願いです、引き渡すのは連邦軍でお願いします・・・なんでもしますから・・・」
「そういえば・・・・・ギダノ元会長って、今どこにいるんでしょうか?」
「カーマ、ダメだ」「そうだ、弁護士を待つんだ」
銀目の口がニヤリと
俺とタンボットが、それを見て慌てて口を閉じる・・・
「なんでも喋る、会長の居場所も、
「そういえば、カーマさん。私の事を妙な名前で呼びましたよね?
それって・・・どういう意味なのか教えて頂いてもいいですか?」
「わかった、俺達3人が持っている会長の不正の情報も全部出す。お願いだから俺達を連邦軍に引き渡してくれ」
カーマの絶叫を、俺達はただ・・・口を閉じて見ているしかなかった。
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